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無人駅
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生憎の大雪で電車が何処かで止まったからしい。かれこれ数時間この駅で待っているが、電車がくる気配は無い。
左手首にある腕時計をのぞいてみると、いつの間にか22時になっていた。俺がこの駅に着いたのが、確か20時前だったから、かれこれ2時間は立ち往生、いや座り往生していることになる。
人が一人でもいれば、心だけでも温まるところだが、残念なことここは無人駅プラス田舎の方だから俺以外人はいない。
どうしてこんな大雪の日にこんなところにいるのだろうか。
その元凶はある一人の女から始まる…。
その女とは俺の友達の一人のはずなのに、なぜか彼女面をしてくる奴だ。しかもそいつは周りに「私は直樹君の彼女なんだからね」と言いふらしているらしい。なんとも迷惑な話だ。
まあ、話を戻すと明日はそいつの誕生日らしい。そして、超がつくほどの高級レストランを予約したのだ。しかも金は俺もち
そいつが「直樹君が来なきゃ、レイプされましたって警察に行くからね!」と脅迫まがいのことをしてきたのだ。
体の関係は持ったけど、同意の上のはずなんだけどな…。
ごたごたするのが嫌だから仕方なく電車を待っている。
今、俺は実家にいるのに…田舎を出て都市の方の大学に行ったんだ、親子水入らずでまったりゆったり過ごすはずだった俺の冬休み。こんなセフレのせいでぶち壊されるとは思ってもみなかった…。
よくこんなきもちで今までもったと、俺自身を褒め称えたい気分だよ。
寒い環境の中、一人寂しく暖かい缶コーヒーを飲んで、汚い色落ちした黄色いベンチに座っている。
いつ心が折れてもおかしくない状況だ。
ついでに言うと今飲んでいる缶コーヒーは3本目。寒いところで寝たら凍死するというが、今の俺はカフェインパワーで睡魔をぶち破った。
ゴクリと一口コーヒーを飲む。暖かいと思っていたコーヒーは少し冷めていた。
帰りたいといえう気持ちを押さえながら強く吹く風や雪に体をあてていると、遠くから階段の登る音が聞こえた。誰かが来たんだと思い階段の方をじーっと見ていると人影らしいものが見える。ずっと見ていると相手も俺に気付いたらしい。すると相手は何を思ったのか俺を見るなり小走りで近寄って俺の肩を思い切り叩いた。
「久しぶりだな!」
そいつは明るい笑顔で俺に話しかけてきた。それは見た記憶がある笑顔だ。
「…もしかしてヒデなのか?」
不安げにそう言うとそいつは笑顔で「そうだよ」と言ってきた。俺は目の前にいる旧友の顔をまじまじと見る。
あぁ、ヒデの明るい笑顔は変わってないな。
「直、お前あんまり変わってないな」
「ヒデも、な」
そう言って二人で笑う。でも昔に大きなしこりを残した俺達は笑顔が消えると、お互い何を話して良いのか分からなくなり、自然と沈黙が訪れた。
雪はまだ降っていて電車が来る気配はまだない。ぼーっと電車が来るかもしれないヒデの向こう側の景色を見た。
「…ごめん…」
ポツリとした言葉が俺の耳に届いた。ヒデをしっかり見ると声は小さいくせに、頭だけはしっかりと下げていた。
「…うん」
その言葉しか思い付かなかった。俺はあの日の事を忘れようと今まで必死だった。
そう、あの日の出来事を。
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