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18歳以上ですか?
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「ただいま。っておや?柚木さんではないですか。
どうされたんですか、こんなところまで。
、、、あぁ、もしかしてお客さんって、、」
扉から現れたのは社さんであった。
そしてその後ろからは、、
「!ふぎゃっ!!チハ、、急に止まんなぁ、、
ん??ありゃ、柚木じゃん!どしたん??」
鼻っ柱を擦りながら顔をひょっこり出していたのはお目当ての日奈瀬さんだった。
「おかえりぃ、二人とも。どうだった外来?」
ツバメさんが手をひらひらさせながら二人を出迎える。
ちょー大変やっぱ外来はきついな、と日奈瀬さんが口にする。
「お疲れ様です、この間の未受診妊婦のことで聞きたいことがあるそうですよ。」
マコトは俺の言いたかったことを素早く二人に告げてくれた。
「ああ、あの野良さんですか、、そういえば、コノハはこの後のあの人のとこに行く予定だったな。確か心臓に異常が見つかったんだっけ?」
社さんは日奈瀬さんに尋ねる。
(、、って!じゃあ、俺が聞いていた心外の先生って日奈瀬さんの事だったのか!?)
確かに日奈瀬さんは心臓外科も専門としていたことを思い出す。
こんなところで丹兎先輩の言葉が役に立つとは。
「うん、おれが最初に診たからちょうどいいってことになってた。今日の朝のカンファで勝手に決められてた、、」
ほんっと人使いが荒いよな、と口をぷっくりさせて日奈瀬が口にする。
まぁ、それだけ優秀だと思われているのだろう。
「すみません、いきなり訪ねてしまって、、
実は、、、」
そうして俺は先程の金糸さんの病室での出来事を話した。
やはり全員医者である。
みんな俺の話に真剣に耳を傾けていた。
「そっかぁ、、金糸さんねぇ、、。まだ18でしょ?
色々不安でブルーになってんじゃねーの?」
頭の後ろに手を当てながらツバメさんが唱える。
「確かにそれも考えられますけど、それにしても少し変じゃないですか?ケイの話を聞いているとなんか怯えてる感じがしますよね。」
「確かに、、搬送された時もかなり錯乱状態にあったような気がしますね。俺たちは専門では無いのでなかなかそのような判断は難しいかったです。」
マコトと社さんが二人で話し合う。
そんな中一言も発していなかった日奈瀬さんが立ち上がる。
「まっ、ここでうだうだ話し合ってても仕方ないし実際に行ってみよっか。柚木、今から金糸さんとこに行こう。
悪いんだけど三人は金糸さんについてもうちょい調べてくれる?」
日奈瀬さんは隣の部屋に何らや準備をしに行くようだ。
俺はちゃっとお茶を飲み干し出発の準備をする。
「準備できたぞ!じゃあ柚木、金糸さんのとこに行くよ。三人ともよろしくね。」
部屋から移動式のカウンターに道具を乗せた日奈瀬さんが声を上げる。
「りょーかい!行ってらっしゃ~い」
「それじゃあ、お茶ありがとうございました。
行ってきます。」
するとマコトが笑って手を振る。
「またいつでも来いよ。今度はお菓子も出すからな」
「ああ、ありがとう。」
そうして俺と日奈瀬さんは金糸さんの所へと向かった。
二人で金糸さんの病室へと続く道を辿っていく。
この病院の窓は所々にステンドグラスがはめられており、今の時間はそれがキラキラと光って美しい。
「日奈瀬さん、金糸さんの心臓の異常って具体的に何があったんですか?」
まだ俺はそこまでの結果が回ってこなかったので詳しく把握出来ていない。
もしかしたらお産に関わるかもしれないと思い聞いておく。
「えっとなぁ、平たく言えばあれだ。左と右の間に小さい穴が見つかった。
まぁ、女性に多い心臓病のひとつだな。」
カウンターを押しながら教えてくれる。
「それって、、お産に影響しますか、、
例えば出産途中に何かあったり、、」
日奈瀬さんは唸りながらもごご、と答える
「んぅー、、なんとも言えないなぁ、、もしかしたらちょっと危ないことになるかもしれないなぁ、、
まぁ、それも含めて今から診察しような」
ごめんなぁ、と言いながら俺を見つめてくる。
俺の方が背が高いため必然的に日奈瀬さんは見上げる形になる。
(、、この人、無意識にやってんのか、、)
「??どした?なんか耳赤いぞ。あっ、もしかして俺なんかついてる」
そう言いワタワタと払い始める彼に笑みが零れる。
「、、なんか日奈瀬さん初めて会った時から印象ちょっと変わりましたね。なんというか、、親しみやすい感じがします。」
「、、それって先輩としての威厳がないってことかだろ!?むぅ、、」
頬をふっくらとさせてじど目でこちらを見てくる。
(そういうところですよ、、)
これを無意識でやっているとしたら末恐ろしい。
そんなこんなで金糸さんの病室へと到着した。
先程のことを思い出し少し足が竦む。
きっと顔も強ばっているだろう。
するとそれを見かねた日奈瀬さんが背伸びをして俺の頬を掴んでふにふにしてくる。
「よぉし!んじゃ気張るぞ!、、ってそんな顔すんなって。だいじょぉぶ、ほら笑って笑って~」
「ひはへはん、ひゃへへない。」
「あはは、何言ってんだよ!」
ひとしきり笑い日奈瀬さんは部屋の扉をノックする。
「金糸さん、失礼しますね。医師の日奈瀬と柚木って言います。ちょっとお話しましょう」
そう言い迷いなくズバッと扉を開ける。
中では金糸さんが外を見ていた。
彼女は俺たちを見つめたかと思うと先程のような低い声で唸るように声を発する。
「、、、また、来たの?来ないでって言ったじゃない!!!」
出てってよ!と叫ぶ金糸さんを気にせず日奈瀬は俺に小声で呟く。
「、、柚木は扉のとこで待ってな。」
「えっ?あっ、ちょ、日奈瀬さん!!」
すると日奈瀬さんはゆっくり歩いて金糸さんの側へと行き、寄り添うようにベッドの傍でしゃがんだ。
「はじめまして、金糸さん。ぼくは医師の日奈瀬って言います。あっちは柚木先生です。今日はぜひ金糸さんとお話がしたいなって思ってきました。」
にこにこと金糸さんの手を取り話す日奈瀬さんはさっきのような幼い雰囲気ではなく、慈愛に溢れた兄のような様子であった。
すると金糸さんはそんな日奈瀬さんにボソリと何かを呟いたかと思うと、、
「話すことなんてないわよ!!!みんな、みんなどうせ私の事なんて本当に愛してくれるわけない!!」
バチンッ、と乾いた音が鳴り響く。
一拍遅れて日奈瀬が叩かれたと脳が認知する。
日奈瀬さんは何も言わずに叩かれた頬を抑えていた。
指の隙間から赤くなっているのが見て取れる。
「日奈瀬さんっ!!」
急いで冷やさなくては、そう思い日奈瀬さんに駆け寄ろうとすると彼はこちらに手のひらを向ける。
そして口パクで、
『くるな』と言うともう一度金糸さんの手を取る。
「あっ、、ごめんなさい、、違うの、、」
金糸さんは戸惑ったように小さい声で謝罪の言葉を告げる。
しかし日奈瀬さんはそれを気にせず彼女に微笑みかけてそのまま続ける。
「ようやく本音で話してくれましたね。ぼくは大丈夫ですよ。でもね、今の状態の金糸さんをぼくも柚木先生も一個人としてほっては置けません。だからお話をしてください、金糸さんが抱えてるものを。」
すると金糸さんは堰を切ったように泣きはじめた。
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