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La・Ruche
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「え? お金……あの、お給料はいただいています」
給与は振込みのはずだ。
当然返そうとする千歳の手をレグルシュは遮り、「もらっておけ」と言った。
「本を買っていただろう。必要なものは遠慮せずに言えばいい」
「こんなにいただけません。それに、ユキくんが欲しいと言ったものではなくて、僕が勝手に購入したものですから」
「ユキのために選んでくれたのなら、経費だ。雇用主である俺が決めるのだから、文句を言うな」
「……ありがとうございます」
横暴だが、言い返す隙のない正論だ。不承不承ながら、千歳は礼を言う。
改めて見れば中には、絵本と千歳が勉強用に購入した子育て本よりも、ずっと多い額が入っていた。
それを伝えようとしたところ、先にレグルシュが口を開いた。
「……それは何だ。自分で描いたのか」
「え……? ああ、ユキくんが描いてくれたんです」
頬の打撲の痕はもうほとんど消えかけているが、夜の間だけ湿布を貼っている。
お絵描き好きなユキが、白い湿布にマジックペンで猫の絵を描いてくれたのだ。
明日に剥がすのが少し心惜しくなる。
「下手くそな絵だな」
俺のほうが上手い、とは言葉にしないが、そう言いたげな顔をしている。
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