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「仕事、今は落ち着いてるのか?」
「うーん、まあ一応ね。もしこっちに来たとしても週に何回かは向こうに様子見に行ったりはしないといけない程度かな」
僕が見えないかのようにいろんなことを話し続けている二人に、段々と居たたまれなくなってくる
僕が少しでも動くと先生は僕の頭を撫でながらも桜井さんと話し続けていた
桜井さんに慣れるとはいえ、本当にずっとこのままいてもいいのかな
「新人扱ってるんだったか。カウンセラーの新人って何となく扱い難そうなんだが」
「最初はどうしてもお互い探り合うのは仕方ないよ。それも職業柄って俺は思ってる」
へえ、と先生がお茶のコップに手を伸ばすと飲み干して空になっていた
「あ、せんせ…お茶、持ってくる」
「行ってくれるのか?」
「…うん」
先生の所から抜けて桜井さんのコップと先生のコップを持ってキッチンの方へと向かう
冷蔵庫を開ければいつも作っているお茶の大きいボトルが二つあった
「…大きいの持ってくればみんなで飲めるよね。もう一本あるから冷たいのはその時に行けばいいかな」
一つを出して二人分のコップに注ぐ。コップとボトル、両方を一気に持って行けないから分けて運んだ
「冷たいの、まだあるので…」
「ありがとう坂崎君。偉いね」
「っ、あ…え、と…そんな、ことない、です」
目を合わせるのはまだ出来なくて下を向いてだけど話は出来た
「高橋のところにも持って行くか」
「俺も一緒に行こうかな。坂崎君も」
「…僕、も?」
高橋に用事、ないんだけどなと思いつつ先生の横に並びながら高橋のいる部屋へと向かう
――コンコン
「高橋。寝てるのか?」
先生がドアの前で声をかけると中で小さく物音がしてそっとドアが開いた
「…え? 何かあったんですか?」
「いや。全くこっちに来ないから寝てるのかと思って来た。具合悪くなったりしてないか?」
「それは大丈夫ですけど…勢揃いですね」
高橋が僕らを見て圧倒されてるようだった
「さて。坂崎君はだいぶ慣れてきたみたいだから次は高橋君とお話しようかな。どう? 何かしてた?」
「いえ。ちょっと復習、というか教科書とか眺めて…たまに寝て、とかしてたので特に何もしてないです」
「達也。いい?」
「ああ。高橋、さっきも言ったがあまり怖がらなくても大丈夫だからな。疲れたら休むんだぞ」
「…はい」
先生がお茶のコップを高橋から回収して桜井さんはそのまま高橋の部屋に入っていく
「…桜井さん。明るい人、だね」
「うるさすぎず、かといって暗すぎないんだ。少し話してどうだった」
「……優しそうだなとは思ったけど、少しまだ怖い」
慣れれば大丈夫だと思うと付け足せば良かったと先生は笑った
「先生」
「どうした」
お茶を入れ終わるのを待っているともう一回頭を撫でられた
僕が話すの待ってるようにも思えて、高橋の部屋を見ながら口を開く
「もし、桜井さんが…高橋の、味方になったら…」
まだ、信じられない二人だから突然いなくなったりとかしてもおかしくない
「高橋の味方になったとしても、俺達の味方だろ」
「…本当に? 本当に、そう思ってる?」
「祐?」
ぎゅ、と自分の手を握ってこのよくわからない気持ちを抑える
「まだ、よく…わからない。高橋は、だって…相馬君たちと、似てて…桜井さんは、先生と一緒で仲良くていい人だった。大人の人だから、大丈夫だとは思うけど…」
桜井さんに失礼かもしれないけど、騙されやすそうだった
高橋は僕を助けようとしてるんじゃなくて…先生や桜井さんを騙して僕を一人にするんじゃないかってどうしても考えてしまう
「わかんない、だけど…怖くて…っ」
「祐、深呼吸しよう。息、苦しいだろ」
いつの間にか息が出来なくなって座り込んだ
先生にしがみつきながらも僕は必死に息をして、だけど…不安の方が大きかった
高橋に、全部取られるんじゃないか
「はっ、はぁ…ひゅ、ぅ…っ、ふ…っ」
そう思わないと…裏切られるって思っておかないと
いつどうなるのか、わからないんだから
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