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第三話 里の仲間(三)
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にっこりと微笑むと、慶都の母は息子を抱き上げ立珂の膝に座らせた。
「暇だとすぐ獣化するの。だから退屈しないよう遊んでやって」
「そうだぞ! 捕まえとかないと飛んでくからな!」
「……本当にいいの?」
「もちろんよ。嬉しいわ、息子が増えて」
朝一番に見る慶都は大体にして全裸だ。一秒でも早く立珂に会うため鷹の姿で文字通り飛んで来る。けれど今日は見たことも無いくらいきっちりと上衣を着て全ての釦を止めている。立珂のために我慢しているのだろう。
「立珂は俺と遊ぶんだぞ」
「あそぶよ! 僕も慶都とあそびたいもの!」
「風呂も着替えも俺がやってやるぞ! 一緒に寝よう!」
「うん!」
慶都は立珂とやりたい事を次々に語った。そのはしゃぎぶりはどれほど立珂との生活を心待ちにしていたかがよく分かる。立珂も嬉しいのか、笑顔で涙を流し始め、泣きじゃくる立珂を慶都の母が抱きしめてくれた。
生まれながらに母がいなかった立珂にとって、慶都の母は初めて優しくしてくれた大人の女性だ。慶都の母は立珂と息子を同時に抱きしめ、泣かないの、と優しく頭を撫でてくれた。その後ろでは天藍も安心したように微笑んでいる。
「鷹が有翼人を愛するとは新時代の幕開けだな」
「は!? 愛する!?」
「そうだろ?」
「っだ、だめだめだめ! 絶対だめ!」
「何でだよ。まさか一生二人だけで生きていけると思ってないだろうな」
「立珂は俺が守るんだ! 立珂は俺の立珂だ!」
この場面なら立珂と抱き合うのは薄珂のはずだ。今までならそうだっただろう。けれど立珂は信頼する相手を見付け、新たな世界へ一歩踏み出したのだ。それが喜ばしいことだと分かってはいても、薄珂はたった一人の弟が取られたようで複雑だった。
ぷんと口を尖らせていると、くくっと天藍は面白そうに笑った。
「寂しいならお前も相手を見つければいいだろ」
「そんなのいない。俺は立珂が一番大事だ」
「今現在は、だろ」
天藍は少しだけ腰を曲げて、薄珂の顔を覗くように見るとぐっと顔を近づけてきた。そして、尖っていた薄珂の唇に自分の唇をちょんとくっつけた。
「……あ?」
「愛情はもっとも利用価値のある鎖だ。これも覚えとけ」
「は!?」
「しばらく先生のところにいるから遊びに来いよ」
「な、なん、い、行かないよ!」
「じゃあ先生に会いに来い」
天藍はひらひらと手を振ると、ほくそ笑みながら出て行った。立珂は慶都ど抱き合いはしゃいでいたけれど、慶都への嫉妬など吹き飛んでいた。
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