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恋は盲目
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先生からプリントを受け取って拓斗の隣に座り、しばらくして全員ペアが決まって、全員がペアの隣に座った。
斜め前の方に座っている横井は結局佐倉と一緒に組むことにしたらしい。
最初からそうすればいいのにとか思うけど、拓斗のこと狙ってるんだろうな。拓斗格好良いし…。
でも拓斗は俺のだし、拓斗だって俺のことしか見てないはずだし、っていうか他のやつなんて見せてやんないし…。
自信過剰って思われるかもしれないけど、拓斗と一緒にいると、拓斗は俺しか見てないって思えるんだ。
「それじゃあ担当を決めていくわね」
そう言って先生が順番に名前を呼んで、呼ばれた生徒は犬のケージの前へ行く。
俺と拓斗が担当になったのは、ポメラニアンの女の子”たまご”だった。
俺はポメラニアンが大好きだけど、たまごはかなり臆病らしく、ケージの隅に座ってなかなかこっちへ来ようとしない。
「元気すぎる子もいるし、逆に臆病な子もいるから、まずはこの時間は、お互い馴れるようにコミュニケーションをとってね。それから、担当犬の名前と犬種と特徴プリントに書き込んでね。犬種と名前はケージに貼ってあるから」
それだけ言うと先生は、自分の連れてきたビーグルを抱きかかえて遊び始めた。
周りも何人かはケージから出して遊んでいる。でも、たまごはケージからは出せそうになかった。
「たまご」
名前を呼んでみると、ぴくりと反応する。
「おいで、たまご」
拓斗の優しい声に、不覚にもドキっとしてしまった。
授業中なのに、俺じゃなくて、犬に話しかけてるのに……!
「大丈夫だよたまご、可愛いね…」
決して手は前に出さずに声だけかけていると、たまごは俺たちに興味を持ち始めたのか、それとも可愛いと言われ良い気になったのか、少しずつ前へやって来た。
結局その日はたまごをケージから出すことはしなかった。
犬が好きだってだけで、犬に好かれやすいとかは考えたことがなかったけど、トリマーになったらもっと早く犬に心を開いてもらえるようにならなきゃいけないんだろう。
そうじゃなきゃ、カットも爪切りも、何もできない。
「薫、そんなに落ち込むなよ」
寮までの道、黙って山木たちや拓斗の後ろを歩いていると、俺の横までやって来た拓斗に頭をぽんと叩かれた。
「俺動物に懐かれやすい方だけど、たまごはかなりビビってたし、そういう性格の子もいるから…」
「うん…。ていうか、落ち込んでなんかねーよっ!」
「そう?」
暗い道で、街灯に照らされる拓斗は優しく笑っていて、なんだかムカついた。
拓斗は何をしても、どこにいても、何もしてなくても格好いいんだ。
恋は盲目と言うけれど、絶対そんなんじゃない。拓斗がかっこいいだけだ。
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