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とりあえず、水(2)
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『ふふふっ、今日さ、最高気温三十六度なんだってぇ。びっくりだよね!!』
途端、弾けたようにキャハキャハと笑い出します。
龍広としては「ああそうですか」と切りたいところでしたが、響があまりにはしゃいでいるものだから切るに切れません。
『猛暑日だよ、もーしょびっ! 三十六って! もー、体温じゃんねぇ!』
一体なにが面白いというのでしょう。
龍広たちが住んでいる街は山と海のちょうど中間地点にあります。
冬は山々が雪雲を遮り、夏は海からの冷たい風にさらされる。
ですから、いくら灼熱の太陽が照りつけたところで普段はあまり気温は上がらない土地――。
東京や西日本ではあまり珍しくなくなった三十五度以上の気温も、ニュースで見るくらいでまだ一度も経験がありません。
それが一気に三十六度だなんて。
「今日は家から出ないほうがいいな……」
『えっ、なんで?』
「日に焼ける。熱中症になる」
『うん、気をつけなきゃだけどさ。夏なんだから外に出たほうが良いと思うんだよね』
「死ぬ気か」
『今から暑いのに慣れておかないと、それこそ死んじゃうでしょ』
「勝手にしろ」
すでに朝日はじりじりと龍広の身体を焼き始めています。
こんな中、外に出るなんて自殺行為です。
さっさと電話を切って、水を飲んで、冷房の効いた部屋へ、早く――。
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