アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
決着
-
前回は、先生と一緒に入った店に、自分一人で入る。
それだけでも、自分自身を奮い立たせないと難しいのに、今回は会いたくもない相手からの呼び出しだ。気が重いどころではない。逃げ出そうとする心をなんとか押さえつけ、いつかは先生が開けてくれた扉を開ける。
「あら、いらっしゃい」
カウンターに座ると、ママが声をかけてきてくれた。
「また来てくれると思わなかったわ。嬉しいけど。・・・なに飲む?」
とりあえずビールを頼み、酔わないようにとチェイサーも頼む。
これからのことを考えると、素面ではやってられない。しかし、前回の失敗がある。酔っぱらうわけにはいかなかった。
呼び出しておいて、男は店にはまだ来ていないようだ。
そういえば、時間の指定はされなかったな。今更ながら気がついて、重いため息が口から漏れた。
一体、なんの用があるというのか。
男は、俺の連絡先を知っているはずなのに、あれから一度も連絡はなかった。今日のイベントで顔を会わせたのが偶然かどうかはわからない。だが、明らかに俺と話をしたがっていた。
俺がここに出入りしていると思っていて、それを脅しのネタにでもする気だろうか。脅される謂れはないが、こういう仕事は評判第一という部分もある。俺はともかく、先生に迷惑をかけることだけは避けなければ。
ビールが温くなってきた頃、ようやく男が店に現れた。緊張から、思わず唾を飲み込む。
「ごめんね、かなり待たせちゃったよね」
男はいっそ憎らしいほど、爽やかだった。
「ママ、いつもの」
やっぱり常連だったのか。わかってはいたが、前回の自分の判断力の低さにうんざりする。
「今日は、誰からも言い寄られてないみたいだね。よかった、遅くなったから心配してたんだ。君が誰かにお持ち帰りされてるんじゃないかって」
余計な心配だが、オレも確かに気にはなっていた。前回は、ビール一杯飲む間に何回もいろんな人間に声をかけられた。
今回は、今日の仕事用の変装が役に立ったということだろうか。目立たない格好でよかった、心からそう思った。
「それで、どういったご用件でしょうか」
このままでは、男のペースに飲み込まれる。焦った俺は、自分から切り出した。
「貴方が、どういうおつもりでも、こちらとしては何もお話しすることも、交渉することもありませんので」
脅しには屈しない。そういう意味を込めて、冷ややかに言い放つ。
「どうして、そんなに喧嘩腰なのかな。この前キスしたの、そんなに嫌だった?」
男には伝わらなかったようだ。
飄々とした態度は、嫌みったらしくもある。
そのまま、俺が相手の出方を待っていると、男も黙って酒をのみ始め、しばらく沈黙が続く。
脅すなら脅せ。早く決着をつけて帰りたい。
俺が沈黙に耐えかねた頃だった。
男が、急に口を開いた。
「・・・楠木、亮くん。私とお付き合いしてください」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
82 / 259