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始まり
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あいつ、リョウに出会ったのは、そんな頃だった。
いまだに苦しむ心に蓋をして、それでも少しは荒れた生活も落ち着いてきていた頃。
高校の悪友の連れがカラオケに誘ってきた。まぁ好みの奴がいれば、喰って捨てようと最低なことを考えながら、あまり期待はせずにすでに盛り上がっている様子の部屋に入る。
中に入って、まず目を引いたのは、場違いなほど綺麗な男だった。
明らかな愛想笑いを浮かべたソイツは、退屈というよりはこの場にいることが苦痛という様子で、興味をそそられた。
不思議と、周りが一歩引いているのかソイツに一切触れようとせず、まるでわざと無視をしてるかのような、そんな様子にも、更に興味を引かれ、気づけば、ソイツに話しかけていた。
「帰りたいんなら、帰っちゃえば?」
急に話しかけられ驚いたのか、俺の方を向いたその瞳は、こぼれ落ちるのではと心配するほど大きく見開いていて。
その瞳に探るようにこちらを見つめられれば、感じたことのない感情で、胸がむず痒く、そんな自分に焦りも生まれる。
「何?オレに一目惚れしちゃった?」
なんとなく気分が高くなり、ニヤニヤと顔が緩むのを止められなかった。
ニヤニヤ笑いが不快だったのか、少しムッとした様子で、ソイツは、ようやく口を開いた。
「違う。モテそうな顔してんなって思っただけ」
想像していたよりも、よく通る声。想像していたよりも、口が悪いようだ。
自分でも驚くくらい、返事が返ってきたのを喜んでいた。
「モテるよ~、女にも男にも」
男にも、の部分をわざとらしく強調して言ってみる。真面目そうな顔がどう反応するか見たかったのに、あっさりとかわされてしまった。
「あっそ。じゃ、俺は帰るわ」
そのまま何事もなかったかのように、立ち去っていく。もう少し、話してみたかったのに。名残惜しく、ソイツが帰るまでずっと見つめていると、チラッとこっちを見た。きっと振り返してはくれないよなと思いながらも、軽く手を振るが、予想通り無視され、あっという間にその姿は見えなくなった。
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