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新入生歓迎会 10
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side Ryu
体育館を去っていく白川。完全に姿が見えなくなってからどうだっと?と雄輔が聞いてきた。
「素顔を見て何かピンときた?兄弟とか聞いてたけど」
「…いや…」
「どうしたの?」
「あ!しろっちがあまりに美人さんだったから驚いてんだろー!俺もビックリした!」
「ちょっと明良うるさい」
騒ぐ明良を祐輔が黙らせる。
「隆盛?」
「…少し混乱してる。今日は帰る」
「え、ちょ…」
呼び止める声がしたが、俺はかまわずに自室へと向かう。
白夜にそっくりな顔。
髪の色が違う。目の色が違う。
だが、あの顔は…。
兄弟はいないと言った。従兄弟も知らないと言った。
だが、見逃してしまいそうな程の、ほんの一瞬だけ見せた動揺。
…何かあるはずだ。白夜に繋がる、何かが。
他人の空似であんなに似るわけがない。
「必ず…捕まえてやる」
「やっぱり運動神経いいね、白川くん」
祐輔がコートを見下ろし言った。
俺達は今、2階席から1-C対2-Cの試合を観ている。
俺と明良は2-A紅、一回戦は余裕で勝ち進んだ。祐輔は2-B白。
一回戦敗退だが、こいつらが集まったチームはやる気の無い奴ばかり。適当に力を抜いて勝ちを譲ったんだろう。
「あ、あの子。中学の時から隆盛にまとわりついていた子だよね?」
祐輔が指差すのは、九条。
何かと俺に付き纏い、入寮早々、生徒会室にまで来て生徒会に入れろとほざいた奴だ。
俺の親衛隊の隊長らしいが、俺は公認はしていない。めんどくさい。
「あの子、全然動かないから大変そうなのに。白川くんと…木崎くんだったかな?
二人が頑張ってるおかげでいい戦いしてるよね」
俺はじっと白川を見下ろす。
隙をついてマークを突破、タンっとジャンプし、綺麗なフォームでシュートを放つ。
ボールは弧を描き、ゴールネットに吸い込まれた。
「わ、スリーポイント。やるねぇ」
第三クォーター終了のブザーが鳴り、コートから出ていく。インターバルに入るとコートから目を離した雄輔は俺に目を向けた。
「…ね、隆盛。教えてよ」
何を、とは聞かない。雄輔が聞いているのは、昨日の俺の態度と白川についてだろう。
「白川の顔を見て、何かピンと来たか…と聞いたな、祐輔」
インターバルの2分が経ち、第四クォーターが始まる。
「あの顔…白夜に似ている」
その言葉に、祐輔が驚いた顔をした。
祐輔も一度だけ見かけた事があるが、あの時は少し離れていた。それにあの銀髪が印象的で顔はあまり覚えていなかったようだ。
「あいつは兄弟はいないと言った。従兄弟も知らない、と。
だが似過ぎだ、他人の空似とかのレベルじゃない。白川の血縁を調べろ」
「白夜を買って、ハマった?」
「あぁ。どうしても、欲しい」
「…分かった。ふふっ。」
祐輔が俺を見て、腹黒い笑みではなく、珍しく普通に笑った。
「…なんだ」
「いや、隆盛が誰かに執着するのは初めてだね」
そしていつもの腹黒い笑みを浮かべる。
「初恋?」
その言葉に熱くなる…が、抑えて祐輔を睨む。
「…殴るぞ」
「ハハっ。耳赤いよ?」
「っ!てめっ…」
「はぁ~い!おまたせー!」
祐輔に掴みかかろうとしたら、飲み物を買いに行っていた明良がペットボトルを投げてきた。
「ん?なんか話してた?」
「ううん、白川くんの試合を見てたんだよ」
「あぁ、しろっち!おぉ~、すげ。あのフェイクは俺もひっかかっちゃうなぁ~」
明良が感心しながら試合観戦を始めた。
明良には話すなよ、という意味を含めて雄輔見ると、雄輔も了解、と目で合図した。
明良に話すと、すぐ誰かにバラすからな。秘密は黙っていられない奴だ、今は教えないでおこう。
「隆盛」
祐輔が俺の横に立ち、俺を見上げる。
「応援するよ」
「…あぁ。」
ふっと笑うと、祐輔は明良の横にいき、試合を観はじめる。
しばらくして、試合終了のブザーが鳴り、1-Cが勝ち二回戦進出を決めた。
「このまま行くと、しろっちんとこと当たりそうだなぁ!楽しみ~」
白川との対戦を楽しみにする明良。
そうだな、俺も楽しみだ。
「隆盛、3階に行くの~?」
賞品に興味は無いが、勝負事には手を抜かない俺は結果優勝を果たし、残った仕事は全て明日に回し今日は帰ろう、と祐輔と明良とともに寮に帰ってきた。
俺達生徒会の寮は8階、だが3階のボタンを押した俺に明良が不思議そうな顔をする。
「あぁ、白川くんのとこ?」
祐輔は理解しているようだ。
「しろっち?あ、怪我の具合見に行くの?」
試合が始まった時から動きに違和感を感じていたら、案の定足を痛めていた白川。
理由を聞いたら、俺と試合をしたかったからと返ってきて、驚くと同時に嬉しさを感じた。
「それもあるけど、何で怪我をしたのか聞きに行くんでしょ?」
「あぁ」
「ん?何で怪我したのか?」
未だ不思議そうにする明良に祐輔がため息をついた。
「明良…もうちょっと状況を理解する頭を身につけようよ…。
いい?白川くんは、理事長の推薦で生徒会に入ったわけだけど、この学園には生徒会に入りたい奴なんてわんさかいるよね?」
うん、うんと頷く明良。3階につき降りてからも説明は続く。
「だから、白川くんは結構恨みを買ってるんだよ。もし白川くんの怪我が誰かによるものだったら問題でしょ?
だから、何で怪我をしたのか聞きに行くの」
「あ、そっか」
ようやく明良が理解したようだ。
白川の部屋は317、もう少しで部屋の前に着く前に隣の316のドアが開き、白川とよく一緒にいる二人、木崎と矢追が出てきた。
「あれ?会長。どうしたんですか?」
珍しくこの階にいる俺を見て木崎が首を傾げている。
「あぁ、白川に用事でな」
「あ、そうすか。聖夜、部屋にいると思うんですよ。
俺の部屋でご飯食べる約束してたんですけど遅いから、足悪化したのかと思って…」
木崎がインターホンを押す。が、しばらく経っても反応はない。
「あれ…?」
横で首を傾げながら矢追が携帯を出して電話をかけ始めた。
「…?出ないよ…?」
矢追は不安な表情になり、そして木崎も顔をしかめ俺を見た。
「…会長、今日聖夜、階段で誰かから押されたらしいんです。まさか…、」
その言葉に俺は胸ポケットから寮の全部屋を開鍵できるカードを出し、機械にかざすと中に入った。
続いて祐輔、明良も入る。
リビングにはいない。
「バスルームにはいないよ」
「寝室もいない」
祐輔と明良がそれぞれ確認したが、どこにも白川の姿はない。ーー嫌な予感がする。
俺は内線を使い寮管へと電話をかけた。
「本田です。誰か1時間以内に寮を出たものはいませんか…分かりました」
俺は電話を切り、祐輔を見る。
「祐輔、今すぐここ30分以内に施錠された学園の部屋を確認しろ。
白川が30分ほど前に寮を出て学園に向かったらしい。調べて連絡してくれ」
「分かった」
頷いた祐輔はすぐに部屋を出ていく。
「明良、お前はついて来い。木崎と矢追は部屋にいろ」
それだけ告げると俺と明良は部屋を飛び出し、階段を駆け降りた。全速力で走り、あと少しで学園に着く間際携帯が鳴った。
『1年専用の更衣室か、体育用具倉庫。この二つ』
「分かった」
祐輔の情報に明良には倉庫に行くように言い俺は更衣室へと足を走らせた。
更衣室の前に着く。基本、どこの部屋も防音だ。だが、人が居る気配がする。
ここ──か?
「ちっ」
舌打ちひとつ。運悪く、学園用の開鍵カードを持っていない。
最悪の展開を予想した俺は、ありったけの力を込めてドアを蹴った。
何度も繰り返していくとガチャンっと鍵が外れ、ドアを蹴破る。
そして目に入ったのは、目を見開いた九条、驚きをあらわにし立つ五人の男、そしてーー衣服を破かれ、床にへたりこむ白川。
「てめぇら、何してる」
目の前の男たちを睨みつけた。
直ぐさま駆け寄り手前の男の鳩尾に重い一発を喰らわせると、左にいた男の顎を蹴り上げ、その勢いのまま後ろにいた男に回転蹴り。
あっけなく落ちた男たち、残りの2人に目を向ける。
ひっと悲鳴を上げ逃げだそうとした二人の頭を掴み、片方には膝蹴り、もう片方には肘打ちをくらわせ、床に崩れる。
ただ呆然と立ちすくむ九条に近づき、問う。
「…どういうことだ?九条」
九条は体をビクっとさせて後ずさった。
「ぼっ僕はただ…、本田さまに、近づこうとするソイツに、制裁をっ…ひぁっ─!」
途切れ途切れにそう主張する九条の胸倉を掴み上げる。
「ハッ。笑わせんな。てめぇにんな資格はねぇ。失せろ、俺の目の前からも、学園からも」
掴み上げていた手を突き放し、去れ、と命じる。
目を見開き、涙を浮かべる九条。虫唾が走る。
「そん、な…僕はただ、本田様の、ためにっ…」
「俺の為だぁ?誰が頼んだ。煩これ以上俺を怒らせるのなら、家がどうなっても知らんぞ」
その言葉に、九条はとうとう床に崩れ落ちた。
もう反論する気力もない九条を一瞥し、俺は白川のそばまで歩み寄った。
「白川…」
片膝をつき声をかけるとビクつく体。
口に収まったままの布を取り、カタカタと震える体を抱き寄せた。
「大丈夫、もう大丈夫だ」
小さい子どもにするように優しく背中を撫で、大丈夫と繰り返す。
腕の中でなお震え続け、そして嗚咽をもらしはじめる白川。
よほど怖かったのか、俺の服の裾を握りしめ胸に深く顔をうずめてくる。
精神的に限界だったんだろう、服を握る力が弱まり、体からも力が抜けて行きーー眠るように意識をなくした白川を抱き上げる。
涙に濡れた頬を見て、言い表しようのない感情が芽生えたーーー。
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