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-黒澤side33-
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「えーっと、あなた名前は?」
「黒澤温人です。」
「温かいでハルト!?えー読めないね!そっちはどんくらい温かいの?ちょっと触らせ…んんんっ!!!!」
「ババロア黙って。……すみません気にしないで。」
カウンターから前のめりに飛び出してきたババロアさんにサッと顔が青ざめるが、すかさずエクレアさんが止めに入る。ママさんはずっと俺のこと穴が開きそうなくらい見つめてるし、なんかもう既にいっぱいいっぱいだ。
「とりあえず話してみて。」
「えっと……7年前、同性の生徒に恋愛感情を抱いてしまって、向こうも慕ってくれていて、卒業したら付き合おうって話までしたんです。それなのに卒業後音信不通になって、気がついたら家まで引っ越してたんです。で、先日たまたま7年ぶりに遭遇して、話しかけたらもう関わるな……と言われました。……まぁこんな感じっす。」
「7年も本気だったのねぇ。貴方、悪くないじゃない。でも何か心当たりはないの?」
真剣にママさんは話を傾聴してくれている。その様子を見て、ナオコさんも心做しか安堵の表情を見せた。
「それが何もないんです。ぱったりと連絡が取れなくなって。……せめて話したいと言ったんですがそれも駄目でした。見たこともないような冷たい表情で。きっと何か気に触ることをしたんだと思うんですが……分からないことには対処のしようもないので。」
「えー簡単じゃなあい?相手おじさんだし飽きたんでしょ?高校時代って果敢な時期だしそんなもんそんなもん!次あたればいいじゃん」
「ババロア!……もうごめんなさいね悪気はないのよ。そうよね、理由が分からないことには、私達の仕事も進まないわねぇ。……チェリー、どうするの?」
うーん、とカウンター越しの3人が唸りながら顔を見合わせた。……これ、なんだか普通に相談室じゃねぇか?隣に座っている衛さんも強く頷いて話を聞いてくれているし。ある意味拍子抜けだ。
「同性云々より生徒を好きになる時点で、教師として終わってるんですけどね……ははは。」
「あら大丈夫よ?それならアンタの隣に座ってる人なんて犯罪者だから♡」
「はぁ!?!?!」
「ママやめてよ冗談でも刺さる……。ほんとに内密に願いたいんですが、僕は男子高校生と援助交際してます。ほんとにほんとに内緒ですよ?」
「……あんたうちの生徒とやってないでしょうね????」
「……ははは、それは~保証はできないです。ごめんなさい。」
フッと柳原の顔が浮かぶが、流石にないか……と頭を掻いた。
……そして、進まない話に終止符を打つように、ママさんの一言でガラッと空気が変わったのだ。
「これは作戦Eかしらねぇ。」
「作戦……E……?」
「E!?それって私の役回りってこと!?嫌よ!!私も仕事姿相手に知られてんのよ!?」
「だからアンタの出番なんじゃない!!程よく情報周知してて、変装が特技。どう考えてもこれはアンタの仕事よ。」
「わあああ!!ナオコの作戦Eひっさしぶりじゃん!!えーーー僕も後からつけたいな~!!」
“作戦E”の意味が分からず完全に置いてかれているが、ナオコさん以外の全員は何故か楽しそうに騒ぎ始めた。……なんなんだ、この団結力は。
「ママさん、それって?」
「作戦Eは、ナオコが変装してターゲットに近づく戦略よ。怪しまれないように近づいて、貴方と距離を置いた理由を聞き出すの。」
「チェリー正気!?もおおお女々しいクロちゃんに懺悔させようと思って連れてきたのに私とばっちりじゃない!?」
「……はぁ、ほんとに文句ばっかりよねナオコは。そんなんじゃ男に嫌われるわよ??仕方ないわね。エクレア、あれ持ってきてちょうだい。」
チェリーさんがパチン、と指を鳴らすと、何やら怪しげなアルバムのようなものをナオコさんに差し出した。
「銀行公務員リスト100名、平均30代後半、平均年収1000万」
「……はい乗った。私、やるわ。任せなさい。」
取引成立、とみんなが拍手喝采だが、当の本人はおいてけぼり感が半端ない。
「……まぁこんな感じで、スナックチェリーはゲイに優しいスパイ集団って感じなんです。夜蜘蛛、って言うのはノンケを食うって意味じゃなくて、必ずターゲットを捕まえる、問題を解決するって意味が本当の由来なんですよ。面白いでしょう?」
衛さんの超爽やかな身なりでなんてことを言ってんだと思ったが、この店の常連って時点でこの人も相当ヤバイ人なんだと察知した。
「その代わり、上手くいって聞き出せた時に貴方に非があったら、その時はじっくりたんまり懺悔してもらうわよ~。あと報酬も宜しく~。」
「私にも貰うわよ!?分かってるわよね!?」
ナオコさんがアルバム片手に息を荒らげながらそう言い捨てた。……こんなに安請けしていいのかこの人は。
「はいまとめ!ナオコがその子と親しくなって情報収集。……話し合いのチャンスはナオコの動きを見て作戦を立てましょう。」
「僕も行っていい~?」
「ババロアは作戦H実行中でしょ?駄目よ」
「エクレアだって作戦X終わってないじゃんかあ!けち!」
……作戦X。まさかZまであるのか。好意はありがたいが、ますます怪しい集団である事が分かった。
「……どう?少し元気が出たかしら。」
「ナオコさん……。」
「いい子達でしょ?……私も頑張るからとりあえずは任せて。だからちゃんと仕事に精を入れてちょうだい。いいわね?」
「……わかりました。」
何やかんやいっていつも肩を貸してくれる白鳥先生は本当に先輩の鑑だと思う。……ただちょっと、世間からズレているが。それだけなんだ。そう、たったそれだけ……。そう頭の中で唱え始めたあたり、俺も毒されてるなと思った。
……その後は想像通り、酒を浴びるように全員で飲んで、朝までコースだったのであった。
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