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-黒澤side14-
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「私が一番言いたかったのは、藤岡先生の部屋が完全に他者立ち入り禁止になったのが、ちょうど明ちゃんを囲うようになってからってこと。・・・わかる?」
うろうろと歩きながら指し棒をポンポンと手の上で叩き、神妙な面持ちで話を続ける。・・・玉置を守るためと考えればこれといって違和感は感じられないが、白鳥先生は「甘いわね・・・。」と大きなため息をついた。
「生徒を守ってやりたい気持ちはわかるわ。でもちょっとやり過ぎだと思わない?本人がそう望んでいるのなら別として、明ちゃんは特別扱いされてるのが嫌って言ってるんでしょ?」
「はい。みんなと同じように絵を描きたいけど、それは出来ないと言っていました。」
「その“できない”は“許してもらえない”ってニュアンスにも取れない?」
その言葉に、俺はハッとした。・・・そうだ、あの放課後の個人面談で玉置が言った言葉に違和感を覚えたのは、こういう事だったのかもしれない。
『 そのお願いは何があっても絶対に聞いてもらえないと思います』
何があっても絶対に。あのときは聞き流してしまっていたが、玉置が出していた小さなSOSだった可能性が高い。
「恩師、っていう割には藤岡先生を見るなり表情固くなるし・・・絶対何かあるわよ、あの二人。」
「白鳥先生・・・俺、どうすれば・・・。」
「とりあえず、敵を倒すにはまず敵を知ること!これ、恋愛の鉄則だから!!」
指し棒を俺の胸にビシッと突きつけて、なんだか1人で盛り上がり始めた白鳥先生にあっけを取られてしまう。・・・間違いなくこの人は今楽しんでいる。
「藤岡先生を知る、ですか・・・。そういえばあの人のこと俺何も知らないな・・・強面で近寄り難いってのもあるんですけど。」
「貴方ねぇ・・・そんな逃げ腰で明ちゃん盗られちゃってもいいの?もーこれだから最近の男性は草食系でやなのよね・・・。」
「生徒に手は出すなっていったり藤岡先生蹴倒せって言ったりどっちなんですかアンタは・・・。」
先程までは自分の方が悶えていたが、いい意味でも悪い意味でもこの人のおかげで冷静になれた。
「私は純粋に明ちゃんを普通の男子高校生にしてあげたいと思うの。それが出来るのはきっとクロちゃん、貴方だけよ。」
「俺・・・ですか?」
「私にはわかるのよ。明ちゃんが貴方だけに心を開いてるのが。・・・もしかしたら両想いだったりしてねぇ?」
「ばっ・・・な、何言ってんすか!かっ、からかうのも程々に・・・!」
「あー、はいはい甘酸っぱいわねぇーもう嫌になっちゃう。」
今日はしこたま飲むかー、と白鳥先生はド太い声を発しながら大きく伸びをして、帰る支度を始めた。
「あの、親身に話を聞いてくれて、ありがとうございました。」
「なぁに急に改まって気持ち悪いわねぇ~・・・じゃあ今度一緒に飲みに行きましょ?それで勘弁してあげる。」
「・・・ゲイバーだけは勘弁してください。」
「あらやだ!ちょっとコッチの世界に足突っ込みかけてる癖によく言うわー。」
そうだった・・・と否定しきれない自分に再度頭を抱えながら、俺も帰る準備をした。
まずは敵を知るところから・・・ということは、自ずと玉置の好きな事にも詳しくなれるチャンスだ。
“ご自由にお取りください”と掲示板に貼られていた、藤岡先生の作品展覧会のパンフレットを手に取り、俺は徹底的に藤岡先生を知る計画を立て始めたのであった。
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