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-黒澤side18-
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「おはよう。席につけ~。今日は夏休み前最後の進路指導だ。事前に渡してたアンケート用紙は後ろから集めろ~。んでその後順次面談な。待ってる間は静かに自習するように。」
面談の前に、進路希望のアンケート用紙を全員から集めると、みな進路はきっちりと決まっているようだった。大学は一般入試が殆どだが、中には指定校推薦希望の奴もいた。専門学校はAO入試か指定校推薦が殆どで、あとはこちらから申し込み手続きを随時行っていくのみだ。
ほかのクラスではまだ進路が決まっていないと頭を抱える教員が多いようだが、うちのクラスは本当に優秀だ。
・・・拳をぶつけ合いながらカラダで学ばせていく熱血教師をずっと夢見ていたが、案外これくらいの年代の奴らは気持ち悪いくらい落ち着き払っていて、俺の学生の頃とは雰囲気が全く異なっていた。まぁ賢いに越したことはないが・・・。
「・・・つまんなくねーのかねぇ。」
若気の至り、なんてよく言うが、当たって砕けて許されんのは若いうちだけだ。喧嘩して方々に頭を下げてた俺が教師になれてんだから、まぁ犯罪さえしなけりゃ人生どうにでも転べると俺は思っている。
やりたい事がわかんねぇからとりあえず勉強していい大学に行く、ってのが最近の若い奴らの考えみたいだが、それで勉強のモチベーションを保てるのが凄いなと感心してしまう。
まぁ中には玉置のようなちゃんとした夢を持って進んでいる奴もいるが。
進路指導室で回収したアンケート用紙を順に見ていると、ちょうど玉置の順番が回ってきた。進路希望は・・・。
「全部美大、か。まぁそうだろうな。」
美大の中でも、第一志望は東大と同じくらい倍率が高いと言われている大学で、筆記試験よりも実技試験を重視する学校だった。確か、藤岡先生の出身校もこの大学だったはずだ。
学力もそこそこな玉置のことだ。受験は特に問題ないだろう。・・・それにあの藤岡大先生に目をつけられているんだ。もう受かったも同然だ。
別に皮肉って言っている訳ではなく、あいつは努力の天才だから、たとえコネだと言われても結果を出せる奴だと俺は思っている。
・・・だがもしこの進路希望さえも藤岡先生の指示だとしたら。
「・・・あああ、いかん。どうしても悪者扱いしてしまうな。」
交換日記をやめたいと言い出したのも、もしかすると俺が勝手に藤岡先生を悪者扱いしているからかもしれない。
玉置の口から“誤解だ”と一言言ってもらえれば俺だって少しは考えるが、あいつはあのとき何も言わなかった。ただ辛そうに視線を逸らせただけだった。
・・・俺はあの空白に必ず意味がある。そう思うんだ。
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