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泣きそうだ。。
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「あんまりくっつくなよ。暑いよ。」
「雨宮さんこそ、服の裾、伸びちゃうじゃないですか。」
「ごめん…って仕方ないだろう!俺はこういう所、苦手なんだよ!お前だって、自信満々に”付き添いましょうか?”とかいったくせに、全然じゃないか!」
「そうなんです(笑)俺も結構苦手なんです。」
幸希の手がぎゅっと握られた。
「でも雨宮さんといれば、怖さもなくなりますね。」
勝谷の横顔の表情は暗くてよくわからない。
幸希はされるがままに手をひかれたまま、俯いた。
「よくそんなクサイ台詞いえるな。」
「ははっ、それも雨宮さんだから言えるんです。他の人には言ったことありません。」
「…他の人にも言ったらいいだろう?」
「なんで?」
小さな声で話しているはずなのに暗い廊下に声が響いて、何度も言葉が跳ね返ってくる。
「なんでって…俺なんかに言っても…。」
幸希は手の力を抜いた。
一瞬静かになった。
暗い廊下が更に暗くなったように感じた。
「すみません…迷惑ですよね?」
静かな廊下に勝谷の弱気な声がよく聞こえた。
幸希は俯いたまま、顔を上げれなかった。
「違うよ…俺が悪いんだ。あんなひどい事いった俺が悪いんだ。俺は君に好かれるに値しない奴なんだよ。だから…」
「俺は…!」
幸希の言葉を遮るように勝谷が立ち止まった。
「俺は本心をぶつけただけです。」
幸希はドキリとした。
「俺が見てきた雨宮さんが好きなんだ。俺だって雨宮さんとは10以上年下だけど、値しないなんて考えた事もない。」
「でも君が見てない部分の俺がいる。ひどい事もいっぱいしたし、幻滅しただろう?」
「幻滅?しないよ。ショックではあったけど…いや、ショックというより、嫉妬に近い感じかな?逆に負けてられないとは思った。」
あっさりといわれて、幸希は嬉しいような困ったような複雑な気持ちが沸き上がってきた。
いくら倒しても起き上がってくる彼は幸希には眩しかった。
(若いな…)
自分にはもう沸き上がらない精神だ。今の自分には倒れたらも起き上がれないと思う。感情が生まれてもすぐに考えてしまう。自分の心が折れないように仕事もプライベートも自己保身を優先する。
(これが傷つきたくない精神かな?)
目の前の子は傷ついても強くなって帰ってくる。
「羨ましいな…。」
「えっ?」
「でも、俺はもう傷つきたくないんだ。」
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