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僕の現実問題
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トコトコと、本当にゆっくりとしたペースで歩く。
いくら体力がないと言っても、流石にゆっくり歩くだけなら平気だよ。
今日は平日の昼間だから、すれ違うのはお散歩中のおばあちゃんとか買い物帰りのおばちゃんだけ。みんな喋らないから、本当に静かだった。
「いいお散歩日和ですねぇー……」
気分ものほほんとなって、ついつい笑顔になる。
いやホント。
超ポカポカなんだよ。
そりゃもう、歩きながら寝れるくらい。寝ないけど。
空気の悪いところはお医者さんに止められてるから、川沿いの丘で歩くのをやめて座った。
うわ、超ふかふか。
思わずゴロンと寝転がると、緑の匂いが鼻一杯に広がった。
超快適。ホントに寝れそう。
まぁ寝ないけど。そう思いながら目を閉じたけど、その心地よさには勝てず、いつの間にか眠りに引き込まれていった。
……………
「…………」
……ん〜…
「………い……」
………?
「……お……い……」
……もしかして、誰か呼んでる……?
「…お…い……お〜きろ………」
も〜、誰だよぉ……
いやいや目を開けるようにして目を覚ますと、目の前、いや、目の上には……
うわ、超目つき怖い。
「おい、誰が怖いだコラ。しばくゾ。」
あ、うん。顔怖い。
「顔怖いとか言うんじゃねえヨ。個性だっつーの。ってか、顔が語ってんだヨ。」
起き上がって再度見ると、やっぱり目つきは悪かった。
黒の少し長めの髪。
ピアス。
スポーツできそうなシンプルなシャツ。
なんか運動してそうな体。そんでイケメン……イケメン?
「失礼ですがイケメンですか?」
「ホントに失礼だな。ってか自分でイケメンですとか言ったらナルシだろ。」
うーん……イケメンだけど、イケメンだけど…!
なんか、残念イケメン。
「おいコラてめェ。その憐れむような目をやめロ。殴んぞ。」
本気で拳を振り上げてきたから両手をあげて戦う気がないのを伝える。
「ごめんごめん、冗談だよ。ところで、誰?」
そう、僕はこの子に見覚えがない。
同い年くらいだとは思うけど、多分高校が違うんだろう。
「会ったことあったりしたらごめん。僕、君のこと全然覚えてないんだけど。」
「会ったことはねェヨ。俺もお前なんて見たことねェしな。チョット風邪引きそうだったから起こしただけだヨ。」
え、目つきのわりに優しい。
「今失礼なこと考えただロ。」
鋭いな。
「考えてないって。それより、起こしてくれてありがと。僕もう行くね。」
「チョット待て。お前学校は?今、平日の昼間なんダケド?」
その言葉そのままお返しするよ。
その言葉はぐっと飲み込んで、僕はニッコリと笑った。
「ちょっと事情があって毎日は行ってないんだ。そういう君は?」
「俺は……アレだ、アレ。喧嘩のしすぎで停学チューだ。」
あっ…(察し)
「イタイ人なんだね。」
しまったーーー!!言っちゃったよ!!!
怒るかな?怒るよね、普通。
「………ナメてんのカ?」
やっぱり怒ってるよねーー!!
「全然ナメてなんかないよ!ただほら!心の声がね!ポロっとね!」
「なお悪いだロ!!…ハァ、もういいヨ。怒り通り過ぎたわ。」
ガシガシと頭を掻きながら溜め息を漏らされた。そういえば名前聞いてなかった、と今更思った。
「僕もう行くけど、最後に名前だけ教えてよ。僕は、光山東。」
「俺は北早荒矢(きたはや あらし)だヨ。じャーな、東クン。帰ったら手ェ洗えよー。」
手だけ振りながら去っていくアラシ。ちょっとオカンだと思ったのは内緒。
少し日が暮れてきた空を見上げながら、僕は、家に帰る道を歩き出した。
なんでこう、死ぬとわかってから仲良くなりたい人ができるんだろうなぁ…。
そんなどうにもならないことを考えながら。
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