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口付
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だが、この時ばかりは、兄は選択を誤った。
兄は両腕を広げ、力なく笑ってみせた。
「殴っていいよ」
すでにボロボロの体をさらけ出し、
よりによって、この私に。
本当に
出来の悪い兄だった
手を伸ばすと、反射的にぎゅっと目を瞑った。
まだ子供っぽさの残る頬に手を当て、痣だらけの体を引き寄せる。
血の滲む唇に触れたら、ようやく瞼が開かれた。
「みき…ひ…」
緩く抵抗しようと持ち上げた腕を捕まえ、
私は、唇を重ねた。
殴られるとか、突き飛ばされるとか、
それが当たり前だと思っていた。
覚悟の上だった。
「……。」
しかし兄は、ただ黙っていた。
ただ黙って、私のキスを受け入れていた。
いや、もしかしたら驚きのあまり硬直していたのかもしれない。
実の弟にキスをされたというショックで、何も行動を起こす気になれなかったのかもしれない。
それでも、これだけは確かだった。
ずっとずっと抱きしめたいと、
ずっとずっと奪いたいと、
永遠に私のものだけにしたいと、
密かに願い続けたこの想いを、
ようやく、伝えられたことだけは。
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