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真実
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眞人は前を向いたまま、沈黙している。
その背中から漂う衝撃を感じ、とても幹彦の犯した罪を伝えることはできなかった。
「…すまない…」
それしか、言えることがない。
「…結威も…幹彦君が、好きなのかな」
「いや…兄弟のようにしか思っていないようだ」
「そうか…」
ふ、と息をつき、眞人は振り向いた。
意外なことに、その顔は笑っていた。
「実はあの時、僕も君が好きだったんだ」
数十年ぶりに告げられた真実に、全身に衝撃が走った。
言葉を失う私に、眞人が車椅子を回して振り返る。
「もちろん、僕は君を兄弟として愛していた。でも、君の想いがそれだけではないことに気付いて…徐々に、君を意識するようになっていった」
「ま、眞人…何を、言って」
「当時は認めたくなかったし、僕にはわからなかったんだ。これが兄弟としての愛なのか、恋なのか。でも、有紀子さんと出会って、彼女に恋をして…その時感じた想いは、幹久…君に対する気持ちと、同じものだった」
信じられなかった。
眞人の言う「想い」は、きっと家族の幸せを願うような、慈しみに似た気持ちに違いない。
しかし、私を見上げる眞人の目は、まるで別れた恋人を見るような、切ないものだった。
「今、無理やり引き離したら…きっと幹彦君も、結威も、延々と苦しむことになるだろう。彼らはまだ、あの時の僕たちのように、その気持ちに戸惑っているに違いない。彼らが自分の気持ちを選ぶまで…僕たちは、手を出すべきじゃないと思う」
確かに、あの時誰かに引き離されていたら、私は眞人にいつまでも執着していたかもしれない。
他でもない、眞人にきっぱりと別れを告げられたから、新たな道を歩めたのだ。
「だから…幹久、見守ろう。結威や幹彦君も、いつまでも子供ではない。自分達できちんと道を選べるはずだ」
「だが…」
「大丈夫だよ、幹久。…今更、こんなこと言ってごめんな」
眞人が笑う。
少し困ったように、切なげに…
私は思わず眞人の前に跪き、その頭を引き寄せた。
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