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貴方の世界に3 ウタ×金
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想像(妄想)入ります!
お店の奥には、ベッドとソファ、机だけが置いてある質素な部屋があった。
「ベッド一つしかないんだよね……。」
「あ、僕はソファで大丈夫ですので。」
そう言ってソファを見ると、作りかけのマスクやデッサンが沢山置かれていて、寝るどころか座ることも難しそうだった。
「カネキくんベッド使いなよ。僕は別のところに寝るから。」
(それは駄目だ!)
常識的にいけない気がして、気づくと僕は叫んでいた。
「い、いえ!ベッドはウタさんが使ってください!僕は……」
咄嗟に言ったものの、続きが出てこない。
(えーっと、えーっと…!)
「…ゆ……」
「ゆ…?」
「ゆ、床で!床で寝ます!」
もうこれしかない。そう思って言ったけど、流石にそれはすぐに却下された。
結果。
「じゃあ、一緒に寝よっか。」
残された選択肢は、それしかなかった。
*
「カネキくん、そんな端っこで大丈夫…?」
「全っ然!!大丈夫です!よ!」
出来るだけウタさんと距離を取るために、ベッドの超端っこに寄る。
(いや別に?嫌って訳ではないけど?僕は。僕は!)
それでも、ウタさんが嫌かどうかは分からないし、なんだかすごく恥ずかしい。
というか、寝れない。
目はまるで何時間も睡眠を摂取していたかのように冴え切っているし、心拍数も走った後のように速い。
心なしか顔も熱い。
それでも必死に眠っている真似を続けていると、後ろから静かな寝息が聞こえてくるようになった。
慎重に振り向いてみると、それはもう綺麗に眠っているウタさんがいた。
(寝るときも綺麗なんだな…)
というか、緊張ゼロ?
僕だけ?こんなに緊張してんの。
そう思ったら、急に落ち着いたというか、肩の力が抜けた気がした。
(まあ……)
寝れないことは寝れないんだけどね。
翌朝。
ウタさんが起きるまであたかも寝ていたような演技をして、ウタさんの起床と同時に僕も起きた。
起床時間は九時頃と遅く、意外、というのが感想だった。
朝食に珈琲をもらい、食事(何故か目玉)は丁重にお断りした。
「ウタさんって、意外に起きるのゆっくりなんですね。」
「店を開くのは大体夕方からだからね。お昼なんて滅多にお客さん来ないし。」
だからそれまでマスク作ったりして時間潰すんだ。
ウタさんのその言葉に、もしかしたら今からマスク作るのかな、と少し期待をした。
「もしかして、今からマスク作りますか?」
「んー……作りかけのやつが一つあるから、それを完成させるかな。」
(見たい。)
素直に思ったことを告げると、ウタさんは快く了承してくれた。
「面白い事なんてないけど、それでもいいならいいよ。」
そう言ってマスク作りを始めるウタさん。
作っているのは、僕のマスクみたいに生地が柔らかいガスマスクみたいなやつだった。
(やっぱり綺麗だな…)
ウタさんも、ウタさんの手も、マスクも。
そこだけ、まるで世界が違うかのような、そんな感覚を覚える。
でも、そこから僕のマスクも生まれてわけで。
それがなんだか、凄く誇らしいことのように思えた。
「……やっぱり僕、帰りますね。トーカちゃんに怒られそうなんで。」
邪魔をしたくないと思い、静かに席を立った。
「あ、じゃあお店の入口まで送ってくよ。」
「ありがとうございます。」
お店から出ると、振り向いてウタさんの方を見た。
「あの、また来てもいいですかね…?」
「もちろん。またいつでもどうぞ。」
ふわ、と暖かくなった胸に触れながら、僕はお店を後にした。
できることなら、貴方の世界に…
いや、
貴方の世界を、また見ていたい。
貴方の世界に一番近い、その場所で。
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