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過去は還らない16
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…しばらくの間、ずっとそうやって抱き合っていた。
二人とも涙が止まらなくて、ただただ嬉しくて。
そうしていると、ぽつりぽつりと月山さんが話し始めた。
「…君に待っていると伝えたあの日から、少しも気持ちは変わっていない。二年間ずっとあのカフェに通い続け、君の帰りを待ち続けていたよ。…見ての通り、少しばかり痩せはしたけどね。」
ぎゅ、と僕を抱きしめる腕に力が入った。
「……途中、待っている間に嫌な噂を聞いたよ。カネキくんがCCGで白鳩として喰種を〝駆逐〟しているというね。嘘だと信じていたが、その噂は色んなところから舞い込んできてね…それでも待ち続けて、本当に良かった…!」
ズキン。ズキン。
胸が痛かった。だってそれは。
それは本当のことで。
「ぼ、僕も、月山さんに言わなきゃいけないことが…」
本当に良かったのかな。
縋ってしまっても。
だって僕は月山さんと同じ喰種を沢山殺した。
甲赫の喰種だって、沢山。
「…?なんだい?」
口を開く。でも言葉が出ない。
なんて言えばいい?
なんて言えば
月山さんは
僕を
許してくれる?
「…月山さんが聞いたその噂は、本当のことです。」
……好きだからこそ、偽ることなんでできなかった。
「ぼ、くは、あの梟戦でCCGに捕まって、記憶をなくしました。そしてそこから2年、捜査官として喰種を〝駆逐〟してきました。」
微かに月山さんの腕が緩んで、悲しくなった。
「記憶のない僕にとって、CCGだけが居場所でした。忘れてしまった20年間に何があったとしても、僕はCCGで捜査官を続けたいと思っていました。」
でも、本当はずっと。
「…でもずっと、心の中に誰かがいたんです。捜査官の僕は知らない、でも忘れられない誰かが。」
月山さんが緩めた分、力を込めて抱きしめた。
「夢にまで見てた。起きたら涙が出てたことだって。でも名前が分からなくて、頼っちゃ駄目なんだってずっと思ってました。」
怖くてなんかじゃない、改めて嬉しくて、ギュッと目を閉じた。
「…変なスーツを着てて、いつも優しくて、ずっと僕を支えていてくれてた人…。やっと思い出せました。」
「カネキくん…」
「貴方だったんだ、月山さん。」
……そこからはもう、よく覚えていない。
月山さんの温かい涙が、唯一記憶に残ってた。
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