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惹かれ合う(ガンマ×ツナ)
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惹かれ合う
「………何処だよ、ここ」
レンガ造りの建物に背中を預け溜息をしながら澄み渡った青空を見上げる
白い雲がゆっくりと流れるのを見つめていると日本と変わらない様子で現実逃避してしまいそうになる
もう一度溜息をして、手に持った地図に視線を落とす
今まで通ってきた道を思い出そうと地図を睨みつけながら辿ってみるが現在位置もわからない
実を言うと地図を読めない
誰か通りすがりの人に聞いてみようと思い顔を上げる
しかし人は少なく、近くを通る人はゴツい人が多い
おそらく堅気じゃない
そういう自分も堅気じゃないが、下手に声をかけて面倒ごとになるのは御免だ
人が多い場所に出るまで取り敢えず適当に歩こうかと預けていた壁から背中を離す
気合を入れて歩き出そうとした時、曲がり角から誰かの走る音が聞こえてきた
ヤバいと思い体を後ろへずらそうと思うが間に合わず…
飛び出してきた人物とぶつかり尻餅をついてしまった
その拍子にオレンジ色のスーツケースも一緒に倒れる
「いたた…お尻がぁ」
「悪い!大丈夫か…?」
ぶつかってきた人が手を差し伸べて来て、反射で手を取りお礼を言いながら立ち上がった
「怪我はないか?」
「はい、大丈夫です…」
「悪かったな、急いでたもんでよ」
黒いスーツをきて、金髪を後ろに撫で付けた男は倒れたスーツケースを起こして綱吉に渡すとズボンに着いた汚れを軽くはたいてくれた
「あ、日本語…上手ですね!」
「まぁな。旅行か?」
「はい。家庭教師にイタリア語を教えられて、上達したから1人でイタリア旅行に行って来いって言われたんです」
苦笑いして言うと男は笑いながら言った
「そりゃだいぶスパルタな家庭教師だな。しかしここら辺は旅行で来るような所じゃねぇぞ?」
「……地図が、読めなくて…」
情けなくて顔を少し伏せ気味にしてポツリと言うと男は驚いた後安心させるように頭をポンポンと軽くたたいた
「何処行きたいんだ?俺が連れてってやるよ」
「え…で、でもさっき急いでたって…」
「あー、そうだったぜ。…取り敢えず着いてこい」
綱吉が男に着いて行くと広い道に出た
さっきまでの場所と違って明るい雰囲気で人も多く賑わっている
美味しそうな匂いを漂わせている店や綺麗な外観の店などたくさんの店が立ち並んでいる
「この車の中で少し待っててくれ」
大きなホテルの斜め前に止まっていた黒い車の座席の扉を開けて男が言った
「用事を済ましたらすぐ戻って来る」
「いいんですか?」
「ああ、遠慮するな」
「ありがとうございます」
少し申し訳ない気がして躊躇われたが男の優しそうな笑顔を見て車に乗った
「じゃあ悪いがここで待っててくれ」
「はい、わかりました」
「一応鍵閉めて行くが、誰か来ても開けんなよ?日本みたいに治安が良いわけじゃねぇからな」
「了解です」
男が鍵を閉めて走って言った後、綱吉は窓から見える景色を眺めた
予約を取ってあるホテルに行くつもりだったのにいきなり迷子になってしまい未だにダメダメな自分に呆れていたが、先程の優しい男に出会った
今回はなかなかついていると思いながら男の顔を思い浮かべた
「イケメンだったなぁ…あの人」
なんとなく堅気じゃない雰囲気だが俺を案内するためにわざわざここまで連れて来てくれた
普通に考えると外国で知らない人に着いて行き1人で車の中で待っていると言うのは危ないと思うがあの人は大丈夫だとそう思った
多分これは超直感が告げている事
信用して良いはずだ
「そういえばまだ名前、聞いてなかった」
なんて言う名前だろうか
名前もカッコいいんだろうな
始め急いでいた様子だったが大丈夫だっただろうか
自分のせいで迷惑かけなかっただろうか
帰って来たらちゃんと謝って、もう一度お礼を言おうーーーーーーーーーー
「おい、起きろ」
心地良い低さの声が聞こえて来る
少し肌寒い気がしながらゆっくりと目を開けると男が目に入った
綱吉は驚いて飛び起きた
「うおっ」
「………あ、」
「ったく、無防備な奴だな?旅行先のしらねぇ奴の車の中で居眠りとはよ」
いつの間にか運転席に座った男が呆れた顔で、しかしどこか心配そうに言った
「ご、ごめんなさい!」
「いや、疲れてたんだろ?悪かったな、待たせちまって」
「いえ、俺の方こそわざわざすみません」
「いいって。つーかそんな薄着で寝てたら風邪引くぞ?ちゃんと起きてろ。今暖房入れたからよ」
「ありがとうございます」
「おう。それで?何処に行きたいんだ?」
「あ、えっと…」
ゴソゴソと綱吉はバッグの中から小さなメモを取り出した
「このホテルに行きたいんですけど…」
「ああ、ここなら知ってるぜ。ここから20分くらいだな」
「ほんとですか?よかったー」
「空港から来たんだろ?さっきいた場所と真逆の位置だぜ?ほんとに地図読めねぇんだな」
可笑しそうに笑う男に綱吉は恥ずかしくて少し赤くなった
「そ、そんなに笑わないで下さいっ!」
「悪い悪い。地図読めねぇのに一人旅とは大変だろ」
車を発進させて前を見ながらもやはり笑っている様子の男に綱吉は少し拗ねた様に口を尖らせて言った
「家庭教師が一人旅でもすれば方向音痴も治るだろうって」
「そりゃ無茶振りだな。その家庭教師とか親は心配しねぇのか?お前のこと」
「あいつは心配なんてしませんよ。親は放任主義だし…」
「大した大人たちだな。俺ならお前見たいなのを1人で外国行かせるなんざ怖くてできやしねぇぜ」
「……そんなにですか?」
運転中の男の方にチラッと視線をやるとちょうど目が合い、男はフッと笑った
「お前何歳だ?」
「17です」
「…見えねぇな」
「よく言われます」
「14くらいかと」
「……俺、これでも頑張って年相応に見える様にしてるんですけどね」
「何処がだ?」
男の言葉にムッとした綱吉だったが表情からからかった訳ではなく純粋に疑問に思った様子だったので綱吉は素直に答えた
「ちょっとカッコいい時計とかネックレスして見たり?笑うと幼く見えるって言われるからキリッとした表情作れる様に練習したり?」
「………まだ見てねぇな」
ボソッと小さく言われた言葉に綱吉は聞き返すが「何でも」と返された
「まぁなんだ。お前なりに色々と頑張ってんだな」
「そうです!」
その後も2人は会話を続け、日本での話やイタリアの有名な観光地の話、外の流れていく色んな店の話などを楽しんだ
あっという間に20分は過ぎ、綱吉を乗せた車は目的地のホテルの前で止まった
「着いたぜ」
「ありがとうございます」
「おう」
「あ、あの」
「なんだ?」
「名前、聞いても良いですか?」
「そういや言ってなかったな、俺はガンマって言うんだ」
「ガンマ、さん」
「お前は?」
「俺は…」
綱吉は名前を名乗るのに少し迷った
一般人ではないだろうこの人に名前を教えても良いものか、と
しかしガンマは困っていた綱吉を助けてくれた優しい人
「俺は、沢田綱吉って言います」
「綱吉か」
「はい」
この人は悪い人ではない
始めから超直感が俺に教えてくれていた
「明日暇か?」
「え?」
「旅行にきてんだろ?俺が案内してやるよ」
「え!?良いんですか!?」
「ああ。お前1人じゃ心配だからな」
そう言って頭に手を置きワシャワシャと撫でるガンマに綱吉は嬉しさで笑顔がもれた
「ありがとうございます!ガンマさん!」
「っ……………」
「…ガンマさん?」
「あ、ああ。何でもない、明日また迎えにくる」
「はい!」
ガンマは上着の内ポケットから手帳を出して何かを描いてからそのページをビリっと破いた
「ここに俺の番号書いたから、なんかあったら電話してこい」
「はい、ありがとうございます」
「あと、敬語じゃなくて良い」
「え、」
「な?」
「わ、わかった。ありがとう、ガンマさん」
「おう。じゃあな、しっかり寝ろよ」
「うん」
「また明日な、綱吉」
「うん、ガンマさん。お休みなさい」
「おやすみ」
車から降りて綱吉は手を振りながら走っていく車を見送った
「………ふふ、楽しみだなぁ」
綱吉は嬉しさでニヤける顔を叩き、荷物を持ってホテルの中へ入っていった
ガンマはサイドミラーで綱吉が手を振っているのを見ながら、1人になった車内でつい先ほどのことを思い返していた
最後にみた、あの笑顔
いきなりの満遍の笑みに一瞬にして、心が奪われた
今まで女が居なかったわけじゃない
初恋だと思うものもとうの昔、まだ少年だった頃に経験した
自分でもモテる方だと思う
だから美人美女は何人も見てきたし男女の中にだってそれなりに持ってきた
だが、これ程までに心が奪われたことがあっただろうか
これ程までに、心臓が音を立てて動いたことがあっただろうか
ーーー俺は、あのまだ10代の少年に……
「マジかよ……」
苦笑いしながらも、ガンマは約束した明日のことを考えていた
出逢ってしまったものは仕方がない
ガンマは自分の想いを認め、受け入れ
あの少年に想いを馳せるーー
つづく…?
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