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4.壁ドンからの優しいキス-4
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キスなんて、そこまで大切にする事だろうか。
この業界にいたら仕事でキスなんて当たり前で、何度も笑いながらネタにして話してくる人間もいる。
けれど、夏は他の人間とは違い、どこか一般人的な要素があるようだった。
ファーストキスは好きな人と。なんて、この業界の人間が聞いたら笑う人もいるだろう。
逆に、キスもした事がないなんてと、驚く人間の方が多くいるだろうと思う。
三善もその一人だ。
けれど、夏と話してて思った。
夏はまだ、この世界に染まってはいないという事を。
「でも、ミカリちゃん可愛いから、キスできるラッキーとでも思えば良いんじゃない? もし、それが芸人とか…男同士とかだったら最悪じゃん」
ファーストキスの相手が不細工だったり、同性だったらそれこそ可哀想だ。
けれど、今回の相手は愛くるしい顔をしたミカリだ。
普通なら、嬉しいはずだと三善には思う。
「だからさ、明るく行こうよ。そんな、明日地球が滅亡するみたいな顔しないでさ」
けれど、夏は今にも逃げ出したいような顔をしている。
よっぽど、キスが嫌なようだ。
けれど、嫌だと言えるのはここまで。
スタッフの男が夏を呼びに来た。
「さて、セットも完了したし、もう少しで撮影始まるみたいだからもう行かないとね」
三善はそう言うと、夏から離れ、夏が着ていた私服のジャケットをハンガーに掛ける。
すると、夏の匂いがふわっとして、何故か心がキュッとなる。
(なんか…ちょっと…ほんのちょっとだけ……嫌だな……)
純粋で無垢で、ファーストキスを大事にしている夏が、誰かとキスするなんて。
何故だか分からないけど、嫌だ。
このまま、ファーストキスを大切にしていて欲しい。なんて思ってしまう。
「三善さん……」
「ん? あっ、何か気になる所とかある? 今なら少しだけなら直せるけ…ど……」
突然名前を呼ばれ、夏を見た。
すると、夏との距離が近くなっている事に気付く。
そして、いつの間にか囲まれる形となり、バンッと夏が壁を押して、道を塞いだ。
「夏君……?」
この状況はなんだろうか。
なぜ、今自分は夏に壁ドンをされているのだろうか。
でも、それ以上に、なぜ自分はこんなにも心臓を速くしているのだろうか。
頭が付いていかない。
三善は数秒固まった。
いや、動けなかった。夏の視線が痛くて、一歩も動けなかったのだ。
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