アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
二話
-
side:更科
食堂の自販機前で本浦先生と
会話をしたあの日を最後に
矢口が声をかけて来なくなった
目があっても小さく頭を下げられるだけ
俺から話かけても
「ありがとうございます」「すみません」
大体この二言で返される
正直付きまとわれなくなって
清々してるのだが
なんだか気にくわないと思ってしまう
次付きまとってきたら
ズバッと言ってやろうと思っていたのに
実行する前にこうでは
俺の溜めに溜まってきたストレスが発散されない
これではむしろストレスがさらに溜まりそうだ
矢口が付きまとってこなくなって
二週間がたった
俺のイライラは募るばかり
なんで声掛けてこねぇんだよ
前までは鬱陶しいくらいだったのに
喫煙室にて俺は煙草をふかしながら
貧乏揺すりをしていた
いかんいかんと思い
貧乏揺すりをしていた足を押さえる
煙草も控えなくては、と
空になった箱を握りしめて思った
ここ数ヵ月で煙草の本数が大分増えた
矢口に出会う前は一日一、二本だった
矢口に会ってからはそれが四本程になり
この二週間でさらに倍ほど増えてる
鬱陶しい矢口が話しかけてこなくなった
煙草の本数は普通なら減るべきなんだ
なのに、なんでだ
矢口に付きまとわれなくなって
一ヶ月が過ぎた
俺の煙草の喫煙量は増えるばかり
ついには一日一箱じゃ足りなくなった
「更科先生…イライラしてますね…」
職員室の端にて
教師たちがコソコソ話すのが耳に入った
教師たちがそう話すのも無理もない
今の俺は目の下に濃い隈を作り
片手で頭を抱える状態でパソコンに向かっている
今すぐにでも煙草が吸いたい
だけど今月のテスト制作担当は俺
テストは三日後
パソコンに映された文字はなし
とてもヤバイ状況だ
ふと顔をあげると
職員室の隅で他の教師と話をする
矢口と目があった
矢口は俺と目があった瞬間
すぐに話をしていた教師へ視線を戻した
それに何故だか腹がたった
腹がたった俺は勢いよく立ち上がると
足早に喫煙室へと向かった
喫煙室に着きポケットを漁る
ポケットに煙草の箱は入っておらず
入っていたのは苺味の飴だった
ふとあの時の矢口の言葉を思い出す
『イライラしてる時は
甘いものがいいらしいですよ』
気付いた時には飴を開封していて
いろんな煙草の匂いが混じった誰もいない禁煙室で
俺は苺味の飴を口に含んだ
甘いものなんて大嫌いなんだ
大嫌いなはずなのに
少しだけイライラが引いた気がした
飴が完全に口の中から消えてから
俺は職員室へと戻る
職員室内は俺が扉を開けると
一気に静まりかえり
俺が席につくとコソコソと話し声
不思議とその声は気にならなかった
パソコンを開き
作業に取りかかろうとした時
俺は机の端で湯気の上がる
コップを見つけた
ゆっくりと自分の方へ引き寄せ
中身を確認すれば
それがコーヒーであるとわかった
ぱっと顔をあげれば
斜め前の席の矢口と目が合った
またすぐにそらされたが
すぐにまた目が合う
そして矢口が俺に小さく頭を下げた
この時、気付いた
"嫌いは好きの裏返し"かもしれないって
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 11