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「こんにちは理事長!」
「はっはっはよく来たな泰浩く……ではない!?だ、誰だお前はまさか凡蔵か!?」
「どうしてそのネタ知ってるの。俺がむしろ驚いてる、とゆかじーちゃん、俺だよ~」
眼鏡を耳にひっかけたまま上げ下げしては、ウィンクする。
へにゃりと何年たっても変わらない笑い方で「相変わらずだな」と言ったじーちゃんに、お互い様だと思った。
「どうしたんだそのカツラは」
もふもふしたソファーに座りながら、ギョッと顔をあげる。
「あるぇ…やはりバレる?もう変装やーめよ。俺本当は王道になりたかったんだけど、初っぱなからミスしちゃったからもう意味無いやあ」
「凡蔵を目指しとったんか」
「だから何でそのネタ知ってるの」
「千代から勧められてな」
あの人はじーちゃんにもオープン腐女子か。
愛読書だと机の引き出しから取り出してみせてくる。見せんでいい。
にしてもそれなら話が早いや、王道に必要な環境整えてほしい。例えば一匹狼くんと同室とか、爽やかイケメンとクラスメート隣席とか、どこの部屋でも開けれるカードキーとかとか。変装やめたからといって王道を諦めるわけじゃない。
「あほか」
あ、俺じーちゃんに暴言吐かれたのはじめて。
熱を込めて語っていた俺は傷付きましたというようにテーブルに額を打ち付けうなだれる。
すると理事長の専用だろう椅子から重い腰をあげて、どうするかと思えば俺のまえのソファーに座った。
「お前には無理だ」
釘を刺しにきたんですか痛い。
見えない言葉の釘がぐさりと胸に突き刺さる。
眼鏡もカツラもつけてない平凡な俺をみつめてなにが楽しいのか、よくわからないけど目を合わせてくるじーちゃんに笑ってみせる。
「なに?」
「……いや」
「どうしたの、変なじーちゃん」
「私はお前の恋路に賛同できん。
王道?駄目だ駄目だ、みんなの泰浩になるくらいならじーちゃんが一生面倒見てやるから私の家から一歩もでるんじゃない」
「かるい監禁発言にも聞こえた」
「はあ…王道は良いぞぅ。でもお前は駄目だ、可愛い可愛い泰浩は駄目だ」
「じーちゃんってば俺が好きだなあ!その思考がさっぱり分かんない、具体的にどのへん?どのへん可愛いの」
「平凡で才能がなくてどうしようもなく阿呆でチキンなところ」
わ、悪口だった……。
呆気にとられて目と口を半開きにしている俺と視線がかち合うと、キャッと女子のように照れるじーちゃん。
オトメンかと心でつっこみながらも、つい「照れるじゃないの」なんて恥ずかしがる振りをした。
なぜかノリに乗せられてしまう。弱い俺。
(それで変装はどうするんだ、泰浩)
(うむ、やめるけど眼鏡だけはかけないとまじで目が悪いんです)
(そんな瓶底でいいのか?オシャンティな眼鏡買ってやるぞ)
(オシャンティ?いや、これも特注だしこれでいいや)
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