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夜明け前に 4
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「今日は、ユキくん一緒じゃないの?」
監督は俺を席に呼び寄せてくれて、食事を取る流れになった。
「朝早いですし。俺はこれから仕事あるんですけど。雪弥さんはオフって言ってたから起こすのも悪いと思って…」
「なるほど、舞台千秋楽明けの朝から仕事なんて大変だね」
「仕事自体は昼からなんです。ただ俺住んでる場所が遠いので、一旦帰宅しようって思うとこの時間に」
監督は俺の話を、うんうんと頷いて聞いてくれる。
「いやーマナ君とユキくんの二人が並んでるのは、なんだかんだうちの舞台カンパニーの名物だったからね。もはや別行動に違和感すらあるよ」
意外な一言だった。
一緒に出るシーンが多いし、俺が雪弥さんの周りをいつもうろちょろしてたからだろうか。
「ユキくんとの共演初めてだったよね?だから、不思議だなぁって皆話してたんだよ」
「不思議、ですか?」
「ユキくんて人見知りだから。何度か一緒に仕事したけど。あんなに色々話してる姿って普段の現場じゃ見かけないからさ」
「そう、なんですか…」
人見知り?
雪弥さんが?
俺の知る限り雪弥さんは、そんな素振りを見せた事は全くない。
でも、腑に落ちる点はあった。
俺が居ない飲み会には行かない。
俺が行くなら行く。
それは人見知り故にだったのか。
席を外したのを咎めたのは、失礼だったからとかじゃないのか。
確かに俺が席を外している間も雪弥さんには、挨拶程度で誰かが長居して話しかけている様子は殆どなかった。
不意に、雪弥さんが昨夜言った、寂しくての意味を理解した気がした。
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