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振り払っても振り払っても巻きついてくる。
もがけばもがく程、足場を失う。
すがりつくようにつかんだ他人の腕はゾッとするくらいに冷たくて血が通っているとは思えなかった。
見上げるとニヤリと笑う大きな口から真っ赤な舌が覗く。
鳥肌がたつ。
これは恐怖心だ。
走りたくてもぬかるみに浸かっているように足が動かない。
やっと見えた一寸の光に手をかざすと、消えてしまう。
出口はどこ?ここはどこ?
これ以上、汚れたくない。
助けて。
叫びたくても声がでない。
遠くで誰かの声がする。
「しゅう、愁!」
手首がつかまれた。
冷た、くない…?
「…あ、僕…」
明るい光の中にいるのは
真っ暗の中で探したその人だった。
「随分うなされてた。」
前髪をかきあげたその手は優しくて、こめかみが痛くなる。
「泣く程怖い夢だった?」
目尻をぬぐってくれた指先が濡れて光った。
「ゆ、うや、さ」
呼ぼうとした唇に暖かい物が触れる。
チュッ、と音をたてて離れると
「優也でいい。」
はにかむような笑顔は少年みたいだった。
「…ゆうや…」
「大丈夫だ。心配するような事は起こらない。」
ヨシヨシするように背中を撫でられていると
グーッ
お腹がなった。
顔を見合わせると気まずい顔をした優也さん。
「ぷふっ…お腹、すきましたね。何か作りましょうか…ふふっ」
「このっ、そんなに笑うなよ。生理現象だろっ」
笑いをこらえられない僕を優也さんがくすぐる。
「ふはっ、ははっ、やっ、くすぐっ、ひゃはっ」
脇腹をくすぐる長い指を掴もうと、腕を伸ばしたら抱きすくめられた。
この人は、なんて暖かいんだろう。
心も体もポカポカにされそう。
「ずっと笑ってろよ。その方が俺好みだ。」
好み…か。
気持ちまでくすぐられた気がして首をすくめて笑ってしまった。
こんなに、のめり込んだら離れられなくなる。
話しておかなくては…
関わるのは危険だと。
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