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「す、スケジュール帳を持ってきていないので、予定が入っているかどうかよく分からないんです。すみません」
咄嗟についた嘘。
本当は、スケジュール帳なんてつけていないし、今週の日曜日に予定は何も入っていない。
でも、こうでも言わなきゃ雰囲気に流されて、今週の日曜日にお茶する羽目になりそうだし……。
立ち話をしている今ですら、こんなにテンパっているのに、二人きりでお茶だなんて絶対に無理だから。
丁重にお断りしたい、マジで。
かといって『あなたとはお茶したくありません』だなんて、正直に申し上げる勇気はない。
ってか、そんなセリフほざいたらさすがに『何様だよ、俺』ってなるだろう。
自意識過剰も大概にしろってなる。
「分かりました。残念ですが、またの機会にお誘いする事にしましょう」
俺の返答に、何故か寂しそうな笑顔を浮かべるおとなりさんを見て、少し罪悪感を感じる。
でも、嘘も方便って事で勘弁して欲しい。
「そうしていただけると、すごく助かります」
……何が助かるんだよ、俺。
もう、自分で何を言っているのか訳が分からない。
これ以上失言しないように、無闇に発言するのは止そう。
そう思って黙りを決め込むと、玄関に二人で突っ立ったまま妙な沈黙が続いて何だか気まずい状態になり、いたたまれなくなる。
もう帰ろう。
別れの挨拶を、と口を開こうとした瞬間、何かが引っ掛かった。
……あれ?
何か話の途中だったような気が……そうだ。
元はと言えば、俺がボーッとしていたからこんなに話が脱線してしまったのだ。
正直言うと一刻も早く帰りたいが、さすがにこのまま帰ったら失礼だろう。
話の続きも気になるところではあるし……。
「あ、あの、話の腰を折ってすみませんでした。話の続き、聞かせて貰えませんか?」
思いきって顔を上げてお願いすると、おとなりさんは驚いたように蒼い瞳を見開いた。
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