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I didn't mean it…5
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久し振りの大学は、あまり変わったところもなかった。
幼稚舎から大学まで同じキャンパスのこの大学は、基本的にいつでも様々な人で溢れている。
正門から入り、待ち合わせ場所の定番となった噴水の前を通過すると、明治時代に建てられたという図書館が見えてきた。
学生は論文やレポートが無い限りあまり図書館を使用していないから基本的に人は少ない。
蔵書の文芸ジャンルは特にマニアックなラインナップで密かな人気があるし、俺もそこが気に入っている。
『ぴっ』
学生証をかざし、入館ゲートを通過した。
……ってあれっ?
今って試験シーズンまっただ中じゃなかったっけ?
松島が最近利用しているであろう、勉強スペースは異様なほど人がいなかった。
試験シーズンは勉強スペースの取り合いになるくらいなのに……。
おまけに今日の功労者である、松島の姿も見つけられない。
おいおい、卒論まだ残ってるんじゃなかったのかよ……という突っ込みをしながら、取り敢えず今日の目的を果たすため、文芸の棚へ向かった。
そもそも松島が卒業出来なかろうが俺の責任じゃないし。
「えーっと、皆月……皆月……」
俺は卒業作家コーナーでお目当ての作家を探す。
『皆月ユキ』
うちの大学出身で、細かい心理描写と幾重にも張られた伏線に定評がある、今売れに売れてるベストセラー作家。
あ、ちなみにうちの大学出身ってことはオフィシャルでは伏せてるから、ここに入荷することを知っているのはコアなファンだ。
今回の新作は恋愛小説らしくて、個人的に恋愛小説は好きじゃないけど、皆月ユキの本だったら多分大丈夫とタカをくくっている。
恋愛感情なんてこういう創作の世界だけの話だって分かってるし、それを現実に置き換えて夢見るほど子どもでもない。
だからこそ読む価値があるんだ。
「あった!」
よしあった!『眠りの蒼』だ!
そして迷わず本を手にすると突然背後から声がした。
「あっ!」
驚いて声の方向に振り返ると、そこにはスーツを着た男がいて、残念そうにこちらを見ている。
あまり見ない顔だけど、あの人も皆月ユキのファンなのかな?なんて好奇心でじっと見つめ返したら一瞬で固まってしまった。
そこにいたのは俺の好みドンピシャの男だったのだ。
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