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第五話「二人」01
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月の光が、闇に染まる木々の間を点々と降り注ぐ。
幻想的な景色の中…俺は自宅に現れたカジの弟子狼、ハルの大きな背に跨がり疾走していた。
かなりの速さだが、それにしっかりザクロも自身の翼をはためき後ろについて来る。
風を受けながらハルが先刻話していた事を思い出し、確認する為に口にした。
「一連の犯人は女朗蜘蛛って言ってたよな?」
「はい」
「正直、カジ一人で倒せない相手じゃないと思うんだけど」
女朗蜘蛛とは、上半身が女性で下半身が蜘蛛の妖だ。
いち妖に過ぎないソイツが、ここまで脅威になるとは考えにくい。
その問いにハルは足を止める事なく返答する。
「…通常であれば。ですがアイツは山の妖達を食い荒らしては吸収し、自らの妖力を高めたのです。その力は恐らく、カジ様にも劣らない」
カジは狗賓の中でも高位だと聞いている。
それに劣らないとなると、かなりの苦戦を強いるかもしれない。
するとハルは何かの存在に気づき、鼻を鳴らす。
「チッ、出迎えが来たようです」
「!」
「え、うわ!」
すると前方から人間の腰程の高さのある数十匹以上の蜘蛛が、所かしこから飛びかかって来た。
ザクロは驚きつつも何とか交わし、ハルも器用にかいくぐる。
「ザクロ、無事か?!」
「大丈夫!けどコレ片っ端から相手するのはちょっと厳しくない?!」
「本体を倒せば消えるので相手は不要です。アキ殿…今から本気で撒くので、振り落とされないようしっかり掴まって。ザクロ殿も私から離れないで下さい!」
「分かった…!」
「オッケー!」
ハルは更に姿勢を低くし、速度を上げる。
その軽い身のこなしはまるで疾風の如く次々と蜘蛛の攻撃を交わし、時折飛びかかってくるヤツを者ともせず噛み千切った。
しばらくすると大群は突然辺りに散り、束の蜘蛛の糸が大量に張り巡らされた山の際奥に差し掛かる。
そして俺の視界に入ったのは蜘蛛の糸に縛り上げられ、木に張り付けられた傷だらけの黒い狼…カジの姿だった。
心が一気にざわつく。
「カジ…!!」
「…っ…アキ、来るな!」
「!」
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