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8ー05
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飲み物を一つだけ購入した俺達は上映会場に入り、チケットの座席を確認する。
座席は一番後ろの中央……時間帯も相まってか、それ程観客も多くなくて俺達の両サイドと前は人が居ない。
千歳のヤツ…分かっててココを選んだのか。
有り難いけど、何だか妙に恥ずかしい気がするのは何故だろう。
そんな事を考えて席に着けば、右隣のザクロがスクリーンを見ながら何気なしに告げた。
「クソ狐も気が利くじゃん。ココならいちゃついてもバレなさそうだね」
「!!」
驚愕する俺を見るやいなや、ザクロはニヤリと含んだ笑顔を浮かべ、わざとらしく顔を覗き込んできた。
「あれ……あーれーれ?その顔はもしかして…オレのイタズラ、期待してる?」
「!…するわけないだろ!折角観に来てるんだ、邪魔したらタダじゃおかないからな」
「ちぇ、連れないなー。まぁ帰ったら沢山相手してもらうから良いけどね」
「…っ!」
その言葉の意味が分かって顔が赤くなる俺に、ザクロはクスクスと笑うと場内は暗転……映画が始まった。
可愛い。
何というか、主役の子猫がいちいち可愛い。
前半は普通に笑いが多かった。
けど終盤に行くにつれ…子猫のルーシィと飼い主一家との絆に感動して、思わず目頭が熱くなる。
それを堪えて真剣に見ていると、突然右手に体温を感じた。
ザクロが俺の手に自身の手を重ね…指を絡ませてくる。
それに驚いてコイツに視線を移せば、優しげに微笑まれ…胸がときめいてしまった。
俺を気遣うような表情と手から伝わる体温は、気恥ずかしいけど…嬉しくて。
この穏やかな時間が、少しでも長く続けば良い…なんて柄にもなく願ってしまった。
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