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ささやき
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僕は、弓弦さんの横にぴったりと身体をつけて、身を横たえた。
互いの心臓の鼓動と、息づかいと、身体の震えが、体温に混じり合った。
僕の方に振り向けた弓弦さんの顔が、闇に白くぼうっと浮かびあがった。
弓弦さんの目が、暗闇の中で、艶を帯びて、びっくりしたように、見開かれていた。
「どうして、そんな目で見るの? あなたが言ったんじゃないか、君が好きだ、欲しいって」
僕は、震える声で、言った。
欲望の戸惑いが、僕の声を震わしていた。
自分が欲望を抱いていることが、こわかった。
泣き出したいほど、こわかった。
僕は、恥ずかしさのあまり、怒ったように言い訳した。
あなたが誘ったんじゃないか、と。
僕の脚が弓弦さんの脚と絡み合い、僕は、二人の体温が上がるのを感じた。
「君は俺を憎むだろう」
弓弦さんの声も震えていた。
「僕は、きっと馬鹿なんだ」
僕は、ささやき声で言った。
僕は弓弦さんを信じたいのだ。
今までと同じように、弓弦さんを信じていたい。
だから、こうして無防備に身体さえ投げ出しているんじゃないか。
僕は、信じていたいんだ。
僕は、裏切られたくないんだ。
弓弦さんは、観念したように、ほっとため息をついた。
「後悔するぞ」
「いいんだ」
僕が囁くと、弓弦さんは、悲しそうな目で僕を見返した。
外の面に広がる闇のように黒い彼の瞳が、間近にあった。
伏せられた睫毛に僕は唇を寄せた。
「早く楽にして」
僕の囁きに応えて、弓弦さんの右手が、僕の身体をさぐった。
「片手しか使えないんだから、あまり期待しないでくれよ」
弓弦さんは、荒い息の下で、照れ隠しなのか、いつものように、少し冗談めかした口調で言った。
「うん」
僕の吐息は、熱を帯び、震えていた。
これから始まる未知の行為への、期待と不安が僕の胸をわななかせていた。
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