アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
触れたい
-
昼休み
相変わらず直輝と屋上で昼飯を食べていた
「文化祭めんど〜」
「直輝これんのか?」
「んー」
「祥が楽しみにしてたのにな3人でまわれるって」
「しょーちゃんが楽しみにしてんなら俺も来るしかないな」
「お前って本当に祥に甘いよな」
「てより俺の中でしょーちゃんが中心てだけ」
「仲いいな本当」
苺ミルクの紙パックを飲みながら直輝が眠そうにしている
祥にだけ甘いのも相変わらずだと思った
「俺よりさ、聖夜こそ先生とうまくいったみたいじゃん」
「っ?!」
飲み込みかけていたお弁当のオカズを思わず吹き出しそうになる
ニヤニヤといやらしく笑いかけてくる直輝に少しだけイラッとした
「………急に言うんじゃねえよ」
「ふはっ怒んなよ聖夜〜」
「怒ってねえよ少しイラついただけだ」
「変わんないだろそれ」
からかう気満々の直輝がケラケラと楽しそうに笑っている
「でもまあ俺も何だかんだ聖夜の事気にしてたよ、おめでとう」
「………なんもおめでたくねーよ」
「ふーん?でも受け入れては貰えたんじゃないのか?」
「…………直輝って俺に盗聴器でも付けてんのか?」
何一つ相談も報告もしてもいないのにお見通しかのように当ててくる直輝にいつも驚かされる
「聖夜って本当馬鹿だよな」
「はぁ?!」
「…先生もなんでこんな馬鹿好きになってくれたのか」
「す、好きじゃねえよ」
「ふっ何照れてんの聖夜、可愛いとこあんじゃん」
「うぜえな…」
明らかにおちょくってくる直輝に背を向けて弁当を食べなおす
「どうせ聖夜の事だから恥ずかしい〜だとか意識しちゃってとかで先生の事避けてんじゃないの?」
「……………」
「図星か」
「……さっさと飯食えよ」
「ああーあムッツリ生徒会長様も大変だね〜」
「ムッツリじゃねえ」
「いやムッツリだよ聖夜は」
「直輝に比べたらましだオープンスケベめ」
「オープンで何が悪い?俺は聖夜みたいに一人で悶々なんかしたくないからな〜」
ケラケラと笑いながら直輝にそう言われる
知ってか知らずか、何だか毎回痛いところを突くこいつの発言はムカつくけどいつも助けられてきた
「恥ずかしがってるのもいいけどちゃんとフォローしてやれよ聖夜」
「…………わかってる」
「あんまりムッツリすぎると嫌がられるぞ」
「うっせーな!」
「ふっ大変だろうけどまあ頑張れよ何かあったらフォローくらいしてやる」
「……おう」
結局いつもこうして面倒見のいい直輝にはお世話になってるんだ
ヘラヘラして飄々としていて何考えてるかわからないやつだし直ぐに人を玩具にするが、周りの人の事は大切にしてる直輝は俺にとってやっぱり大切な友人に違いなかった
唯一気の抜けるお昼休みは直ぐに過ぎて
また怒号の放課後になる
昨日と変わらず山程積んである紙に目を通して片付けて行くとあっという間に夜だ
まともにクラスの出し物の手伝いもできていなくて申し訳ない
今日は昨日遅くまで手伝ってもらった分、途中から副会長にはクラスの出し物の方に顔を出すように伝えて一人で生徒会に残っていた
文化祭特有の放課後に騒ぐ声もスッカリ聞こえなくなり時計を見ると9時を回ろうとしている
一般生徒の残っていい時間は八時までで
許可をもらった生徒も学校の警備が入る九時までには校舎を出なければならなかった
急いで鞄を持って生徒会室を締めて校舎に戻る
職員室迄カギを返すのが億劫で明日の朝早く来る事にした俺はそのまま真っ直ぐ下駄箱に向かった
シンとした暗い校舎を歩く
確か一週間はずっと先生遅くまで残ってくれてんだよな…
窓から見えた職員室の明かりを見上げて考える
今日は一度も会えなかった
昨日のあの数分を思い返して先生に会いたくなる
ぼーと突っ立ってそんなことを考えていたら後少しで九時になりそうで急いで靴に履き替えると駅へと向かった
駅に着いて電車に乗り込む
もうすっかり夜に包まれた街は暗闇の中色んな光が散っていた
この光の中に沢山の人が生活しているんだと思うと不思議な気持になる
俺もその中の一人で、俺とおんなじような事考えてるやつも沢山居るんだろう
恋って不思議だよな……
そこまでぼんやり考えて直輝に昼言われた馬鹿だよなって言葉が脳裏に浮かんだ
……なんだか俺も俺が馬鹿に思えてきたな
先生を好きになってからやけに変な事ばかり考えるようになって確かに馬鹿だなと認める他ない
だけど思ったんだ本当に
この光の中一つ一つに沢山の人が生きてて
一人一人の何かしら抱えてるものがあって人生があって
その中で恋をしてるやつも居て
まだしてないやつも勿論居て
きっと報われなくて泣いてる奴も居たら
幸せに包まれてる奴も居て
そう考えると「恋人」ってものが本当に凄いと思った
人と人が付き合ってましてやお互い好きあってるなんて奇跡みたいなもんだって
それに俺と先生は同性だ
男同士できっと周りから見て気持ち悪がられるのは考えなくとも分かる
その上今は教師と生徒だなんて
世間の一般から見たら二重も普通から離れてる
だからこそ先生は俺に普通に恋をしろと言ったんだろうし
俺はまだ学生で親に守られてるけど
先生はもう大人で一人の力で生活している
俺の見てる視線よりもうんと上で
色んなモノが見えてて俺には分からないような悩みもあって
それでもしも先生が一人で悩んだとき
俺はそれを知らずに過ごすんだろうか
一人で悩ませたままだなんて嫌だな
好きな人の力にもなれない事が起きたら悔しいだろうな
先生とか絶対一人で考え込みそうだし
また爆発するまで抱え込んだり我慢しそうだしな
でも泣き出すのはぶっちゃけ可愛かったなぁ…
いつも困ってるかムッとしてるか笑ってるかだったけど案外泣くときは子供っぽいんだな先生って
それに聞き間違いじゃなかったらいつもは私って言ってたのに泣いた時だけは俺って言ってたし
先生の事まだ全然知らないんだ俺は
ぐるぐると頭の中に今迄見てきた先生のいろんな表情が思い浮かぶ
先生の困った顔意外と好きだった
いつも真っ直ぐ立って凛としてる先生が切羽詰った表情で狼狽えているのは可愛い
キスした時とかビクッとしたまま動かないのとか
初めの頃あの人息止めてたし
段々思い返す顔がイヤらしい先生ばかりになってくる
……初めて抱いた日先生苦しかっただろうな
あれも全部無理してくれてたんだろう
モヤモヤしたりドキドキしたり
今迄全くそんな感情とは無縁だったのに先生に触れてからずっと熱っぽいままだ
直ぐに先生の事ばっか考えてるし
直輝に言われた通りムッツリなのかもしれねえ…
いやでも皆そんなもんじゃねえのか?
俺がやっぱり少し馬鹿なんだろうか…
先生も考えてくれてたら良いのにななんて
結局電車に乗っているあいだ俺はずっと先生の事だけ考えていた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
32 / 57