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ちゃんとしてくださいお兄さん
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「あんたさあ……いつか死ぬぞ」
「えー?
でも鷹也くんいるし~」
バイトが終わって数日、そう、数日しか経っていないはずだった。
どうせなら偶数人がいいと
羽島の提案した肝試しに高槻も誘おうとなって、
鷹也がアパートに行く約束もしたしと伝言役になったわけだが、
アパートに着いて電話したら電話口でやけに慌てた声が聞こえて。
すぐ後に聞こえた盛大な音に鷹也が何事だと慌てて中に入れば、
失敗したというような顔で、高槻が笑っていた。
物に溢れた、足の踏み場もないような部屋で。
「鷹也くんいきなり来るんだもん」
「あんたがこんなものぐさなイメージなかったからだよ」
「あーあ、せっかく鷹也くん連れ込む時はちゃんと片付けてたのになあ」
「知りたくなかったよそんな事実」
いったい何をしたらものの数日でこうなるんだと
鷹也は心のなかでつっこまざるを得なかった。
てきぱきとした手つきで物を仕分け、
見る見るうちに鷹也の手によって部屋は片付いていく。
最終的にゴウンゴウンと古めかしい音をたてて洗濯機が回るまでになり、
そこまで終わった頃には引っ越ししたてのように片付いた高槻の部屋。
「やー、鷹也くん家政婦さんみたいだねえ、
凄い凄い、ご褒美にちゅーしてあげようか?」
「いらねえよ」
「ふふ、照れちゃって~」
「照れてねえよ寄んな触んな離れろ」
べたあ、とくっついてくる高槻の頭を叩いて、
げんなりしたように言う鷹也。
それに高槻はまた笑みを深めて、すると少し鷹也は複雑そうにする。
「別に、二人なんだから素で居れば?」
「んー?
僕はこっちも素なんだけどなあ」
「俺は今のよりあっちのが好きだけどな」
「…………なんだ、惚れてくれたのお前」
べたべたとくっついてきていた高槻は、
鷹也の呟いた言葉に目を丸くして、
そして後ろから鷹也の顎を掴んで無理矢理目線を合わせて不敵に笑う。
声色も、甘くて柔らかいものから、色気を含んだ低いものに変わって
急に豹変する高槻に、鷹也は思わず驚いた顔をしてしまって。
にまぁ、と笑う高槻に言葉を返す余裕もなく数秒間硬直する。
「はっ……なんだよ、マジで惚れてくれたの?」
「……違ぇよ、離れろ」
「なー鷹也、腹へった」
「料理できんだろがあんた」
顎から手を離したものの、鷹也からは離れずに
べたべたと抱きついてくる高槻に鷹也はため息をついて顔を背ける。
海の家で焼きそばだのなんだのを手作りしていたのに料理ができないとは言わせない、と
抱きつきながら腹の虫を鳴らす高槻をぐい、と押し返した。
「鷹也の手料理が食いたい。
真咲くん言ってたし、鷹也は料理上手って」
「あの馬鹿……」
「あと脇腹弱ぇんだって?
マシュマロ1つで教えてくれるんだからほんと、可愛いよなあ」
「っ……!!
……っの、ド天然が……!!」
さわさわと怪しい手つきで脇腹を撫でてくる高槻に
鷹也は思わず体を震わせつつ真咲を恨めしく思った。
このぶんでは菓子で釣られて何を言われているかわかったもんじゃない、
そう思った時、ふう、と耳に息を吹き掛けられて思わずひきつった声が漏れる。
「俺は別に、食うのお前でもいいけど?」
「~っ……、……作りゃぁ、いいんだろ……!!」
「……ん、じゃあよろしくな?」
「……くっそ……」
肝試しだけ誘ってさっさと帰ろうと思っていた鷹也は、悔しそうに立ち上がって
少しだけ舐められた耳朶を擦ってキッチンに向かった。
もしかして素の高槻に自分は弱いのでは、
いや寧ろ逆らえないのではと思って
これから苦労しそうな予感にちらりと振り返れば
目があった高槻は子供っぽくくしゃりと笑って。
それでまあいいか、と思ってしまう鷹也が
本当に逆らえないのは、この高槻の笑顔なのかもしれない。
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