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夕飯
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「お客さんって久しぶりで張り切っちゃった!」
「す、すごい…」
リビングに行くとテーブルの上には大皿3つ分のおかずが並び、パーティーのようだった。
どれも美味しそうで、見てるだけで腹の虫が鳴きそうだ。
「兄貴は?」
「サークルで飲んでから帰るって言ってたわ」
潤と潤のお母さんのやり取りを聞いて、玄関で見た写真を思い出す。
「お兄さん、大学生?」
「ああ、うん」
「下手に酔うと絡み酒になるから、帰ったら気をつけてね」
潤のお母さんの言葉に苦笑いで返す。
「そういえば潤のお父さんは…」
「診療終了が8時で片付けてから帰ってくるから、いつも9時過ぎになるのよ。先に食べてましょ。
あと、潤のお父さんお母さんって長いでしょう。おじさん、おばさんでもいいし、私の名前は和葉だから、和葉さんって呼んでもいいわよ」
おばさんと呼ぶには潤のお母さんは若く見えて少し抵抗があった。
「なら…和葉さん、で良いですか…?」
「ええ!その方が親しみやすくてずっといいわ」
友人の母親を名前で呼ぶというのは、友達付き合いの少なかった僕にはない経験で、少しムズムズとした。が、確かに面と向かって話すときの呼び方には迷っていたので助かった。
「じゃあ食べましょうか」
食事の準備ができて、潤の隣の席に座る。
「「「いただきます」」」
和葉さんの話題の提供により、食卓に会話が途切れることはなかった。
「それにしても、葵くん本当に勉強できるのね」
「理系でも文系でもどっちでも行けそうだよな。来年どうするんだ?」
「実はちょっと迷ってるんだ。
将来何になりたいかとかも全然決まってなくて…
潤はどうするの?」
「俺は文系行くよ。将来先生になりたいなぁって思ってて、教育学部なら文系から入れるし。
まあ数学が苦手ってのもあるけどな」
「そっか、ちゃんと決めてるんだ…すごいなぁ」
潤がそこまで将来のことを考えてると知らなくて、少し驚いた。同時に焦りを感じる。
僕は…何がしたいんだろう…
「慌てなくていいわよ。まだ高一なんだから、決まってない子も沢山いるわ。
それに将来の夢なんて、思わぬきっかけから生まれたりするんだから。
潤だってこう言ってるけど、他のことに魅力を感じて全然違う職に就くかもしれないのよ。
若いうちは、迷ってなんぼ、間違ってなんぼってね」
和葉さんの言葉は、僕の胸にじんわり染みるように広がっていった。
その後も色々な話をした。友達の話、先生の話、スポーツの話なんかもした。
和葉さんの会話力のおかげもあるが、とても楽しい時間だった。
テーブルに並んだ料理はどれも本当に美味しく、普段あまり食べない僕でも、結構な量を食べた気がする。
それでも潤と比べるとかなり差はあった。
「葵くん、もういいの?」
「はい、お腹いっぱいです。すごく美味しくて、食べ過ぎちゃいました」
「小食なのね…あ、そうそう、明日学校休みでしょう?今日うちに泊まっていったら?」
和葉さんの突然の提案に驚いて手と首を同時に横に振る。
「さすがに迷惑になるので…」
「ならないわよ〜。布団はあるから、潤一の部屋に敷いたらいいし。うちは何も問題ないわ」
「そうしたらいいよ。服はちょっと大きいかもしれないけど、俺の貸すし」
潤にもそう言われ、少し悩んでしまったが、すぐに答えは出た。
「すいません、せっかくですが家のこと全部ほっぽらかして来てしまったので、今日は帰ります。
それに…母が帰ってくるかもしれないので、家に誰かいないと」
家を出た母さんが今夜帰ってくる可能性は十分にある。
鍵を持っていなかったら締め出されてしまうから帰らないわけにはいかない。
「そっか。まあ来たくなったらいつでもおいで。うちはいつでも大歓迎よ」
「はい」
心配そうな面持ちの潤と目が合ったが、大丈夫という気持ちを込めて笑顔で返した。
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