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「アリアナ-グランデ。知ってま…」
知っているかどうか、聞くより先に、蒔田の右耳からイヤフォンが引き抜かれる。そのまま、ためらいなく深山はそれを自分の左耳に入れた。
ドン引き…というのとはちょっと違う。ただ、びっくりして、蒔田はタブレットを落下させそうになった。すんでのところで、深山がキャッチする。
「おわっ…あっぶねーなー」
ほい、と手渡されてようやく平常心をとりもどした蒔田は、曲に集中するふりをした。聞き慣れた洋楽が頭のなかを上滑りしていく。
ぐぐっとさらに詰め寄ってタブレットを覗きこむ深山の髪が目の前を泳ぐ。ほわり、とシャンプーの匂いがした。嫌いじゃない匂い。doveかな。
妙に顔の近さが気になって、なるべく息をしないようにする。この人のパーソナルスペースは、どうなっているんだろうか。
「へー。いいね。歌詞の意味はわかんないけど」
ありがと、とイヤフォンを返す深山の感想に。
ようやく笑って蒔田はたずねた。
「英語、苦手っすか」
「間違いない」
くくっとお互い笑って、顔を合わせた。そりゃそうだ。中、高、ずっと野球漬けだったから、英語に限らず得意科目は見当たらない。笑うとさらに幼くなる深山の顔に、しばらく見いっていた。
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