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悪いかよ。
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でも、ふとした瞬間に、感じてしまう。
ボクが居なかった、事実を。
どんなに3人が頑張ってくれても、
"居なかった"穴は、埋められない。
それは仕方のないことだと、
知ってる。
でも、歯止めが利かない。
"疎外感"
感じちゃいけないと分かっているけど、
それはどんよりと、ボクを包み込んでいた。
それでも、ボクは隠す。
それは頑張ってくれる人に、
聖也さんやりっちゃん、長谷川に対して失礼なことだから。
ボクの勝手な被害妄想、だから。
黙ったまま下を向くボクに、
聖也さんが"大丈夫?"と心配そうに尋ねてくる。
ボクは慌てて顔を上げ、"大丈夫です"と明るく返事をした。
"バレちゃいけない"
そう思えば思うほど、言動に違和感が増していく。
その焦りが伝わってしまったのか、
聖也さんの顔が悲しげに歪む。
"呆れられてしまった"
"嫌われてしまった"
その思いが、上げた顔を下げさせる。
もうダメかもしれない、
そう思った時、頭の上にふわっとした感触が伝わってきた。
顔を上げると、聖也さんがボクの頭を撫でてくれていた。
『我慢しなくて、いいんだよ?』
優しい声と、落ち着いた微笑みが、
りっちゃんのものと重なり、
視界がボヤけていく。
ぽたり、ぽたりと、ボクの手に雫が落ちる。
撫でられたアタマに力が入り、
ボクの体が聖也さんの体にくっつけられる。
胸の鉛が取れたように、ボクから力が抜けていく。
聖也さんは何も言わない。
ただ黙ってボクの体を支えてくれた。
涙を手で拭いながら、ボクは口を開いた。
「聖也さん・・・」
『どうした?』
優しげに聞き返してくれる聖也さんにボクは、
"もう少しこのままにさせて"と、告げた。
聖也さんは、返事の代わりに、ボクの髪を手で梳いてくれる。
"こんな人が父親でいて欲しかった"
"この人と大切な人と、ずっと一緒にいさせて欲しい"
ボクはそう思いながら、
まだ濡れている目を静かに閉じた。
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