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恋愛物語
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「…………そして結ばれた二人は末永く幸せに暮らしました」
ルーシャはぱたんと本を閉じて俺を見る。
「どうだった? なかなかいい話だろ?」
感想を求めてくるが、なんと言えばいいのか……。
とりあえず浮かんだ感想を口にする。
「よく分からなかった」
「……嘘だろ? どこがだよ?」
ルーシャは信じられないという顔で聞いてくるが、全体的によく分からなかったのだ。
仕方がない。
まとめると、ある貧しい女に恋をした王子が、少しでも女の暮らしを豊かにしてやりたいと、そんな理由で毎日会いに来ては豪華な贈り物をする。
しかし女はそんなものは貰えないと突き返してしまう。
それでも毎日やってくる王子に女は、何故私などを気に掛けるのか、と聞く。
王子は恥ずかしがり屋だった。
そのため、素直に好きだからだとは言えずに黙っていた。
そのうち女は王子に会うのを避けるようになった。
何日も会えずにいた王子は女の家の扉の前で、本音を口にする。
好きだからただ会いたいのだ、と。
贈り物は会うための口実にすぎないのだ、と。
それを聞いた女は、豪華な贈り物より何よりもその、好きだという一言が聞きたかったのだと涙を流して喜んだ。
そして二人は結ばれた。
思い返してもよく分からない。
「王子はなぜ素直に最初から好きだと言えない?」
「男には行動で分かって欲しい気持ちがあるんだよ」
「分かってもらえなかったようだが……?」
疑問を口にすると、ルーシャは「だから-、結局は言葉にすることも大事だって事だろ」と、締めくくった。
「人間が言う好きという言葉には何か呪いがかけられているのか?」
そんな俺の言葉にルーシャが、は? と、口を開く。
「何でそこで呪いになるんだよ」
「例えば言った相手を支配するとか。だから王子は最後にそれを使ったのか? それじゃあ物語の結末で女は支配されてしまった?」
だとしたら恐ろしい話だ。
「支配……。 なんか、そう言われるとあってるようなあってないような……」
そう言ってしばらく考えていたが、「いや、んな訳ねぇだろ!」と、ばっと顔を上げた。
「何でこんないい話がそんな恐ろしい話になるんだよ。お前の感想を聞いてると混乱する。好きな話だったのに……」
そうか、やはりこれはルーシャの本だったのか。
「はぁ、人魚ってのは恋心が分かんねえのか……」
可哀想なものを見るような目で見られるが、別に分からなくてもいい。
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