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髪飾り
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あまりにも酷いから綺麗にしてやると言われ、そのまま髪をといてもらう。
しばらく会話もなくされるがままに身を任せていると、「あー……髪! 寝るとき大変だろ?」と、唐突に大きな声で聞かれた。
「まぁ、それだけ長かったら日常生活でも結構大変か……」
髪を持ち上げられて、長さを確かめるように指を通していく。
確かに立つと膝位まである髪は、歩けるようになってから少し煩わしく思うこともある。
ルーシャか持ち上げる髪を見ながら、「切るのもいいか……」とぽつりと言えば、すぐに否定の言葉が飛んできた。
「それはもったいないだろ! それじゃあせっかく俺が」
途そこまで言うと、途中で言葉をとめてしまった。
「せっかく?」
中途半端にされると気になる。
先を促すようにルーシャに目を向ければ急に手つきがたどたどしくなった。
しばらく言いにくそうに俺の髪を指先で弄っていたが、無言の空間か、それとも俺の視線に耐えかねたのか口を開いた。
「そうだ! せっかく俺が便利な物を作ってやったんだからな」
便利な物?
不思議に思っていると、ルーシャが着ていた服の中から光沢のある赤い紐を取り出した。
日に当たると少し光って見える。
「綺麗だな。ルーシャが作ったのか?」
「そうだ、なかなか大変だったんだからな」
そう言ってずいっとこちらへ手を差し出す。
「俺に?」
「そうに決まってんだろ。俺は髪が長くないし」
乱暴に俺の胸に押しつけるようにして渡すと、何故かそっぽを向いてしまった。
「ありがとう。綺麗で嬉しい」
そう言えば、前にルーシャが何か黙々と編んでいたのはこれだったのか?
「たまたま……! そう、たまたま余ってたから作っただけだからな」
俯きながら、そう念を押される。
「ありがとう」
わざわざ作ってくれた事が嬉しくて自然と笑顔になった。
「礼はいいから。それからあんまりこっち見るな……」
片手で口元を隠してもう片方の手で動物でも追い払うような仕草をされた。
何がいけなかったのか分からないが、取り敢えずルーシャから視線を外し、手の中の紐を見る。
規則的に細かく編み込まれていてルーシャは器用だな、と思う。
作る物も美味しいし。
しかし、少し口が悪いのはサシャの影響だろうか。
上の者に影響されてしまったのか……。
それでも良く変わる表情は見ていて好ましく感じる。
まぁ、サシャほど笑顔でいるわけではないが。
「おい、自分じゃ出来ないだろ? ほら、俺がやるから」
手の上から紐をとると、ささっと一つに束ねて首のあたりで結んでくれた。
せっかくの綺麗な紐が見えないのは残念だが、これだと髪を気にしなくても自由に動けそうだ。
「今度は編むのもいいかもな……」
髪をじっと見ながら、考えるように顎に手を当てて言う。
俺としてはルーシャがやってくれるなら何でもいい。
髪を大事にしているわけではないし、短くてもいいくらいだ。
「やっぱりちょっと編んでみるか」
それでも……
俺はこの時間が気に入っているから、やはり髪を短くするのはもったいない……そう思った。
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