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顎
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メイド服を着せたのは正解だった。
見事に着こなしている。
扉から入ってきたユーリに瞬殺されたアーサーは数秒固まっていた。
「……アーサーさま…?」
ハッと我に返り、慌てて返答をする。
「……黙っていろ。私は今忙しい。」
「っ……ご、ごめんなさい……。」
ユーリは頭を下げ、しゅんとした。
(………………………。)
怒るつもりはなかったのだが、ついいつもの癖で強く言ってしまった。
ユーリが静かになってしまったので、とりあえず自分もサインを済ませようと手を動かし始めた。
そろそろ夕飯の時間だろう。
連れて行こうと立ち上がり、いつの間にか床に正座をしていたユーリに近寄る。
「おい、立て。」
その言葉にユーリは急いで立とうとする。
しかし、ユーリはバランスを崩し、横に倒れてしまった。
(……………?)
「………どうした…?」
声を掛けると、ユーリの肩がビクッと揺れる。
「な、何でもないです…!い、今!立ちます…!から…!」
何故かユーリの声は尋常じゃなく焦っているように聞こえる。
(…そんなに焦らなくてもいいだろうに。)
ふと下を見ると、ユーリが足を必死に動かそうとしているのが見えた。
(……あぁ…足が痺れたのか…。)
馬鹿だな、と思いながらも。
アーサーはユーリを立たせようと、何気なく手を伸ばした。
ユーリの顔が一瞬にして歪み、頭を抱える。
「っ…!た、立ちます…から…!ごめんなさ……ごめんなさい…!ぶたないで…!!」
ユーリは震えていた。
何をそんなに怯える必要があるのか。
怒っているわけでもないし、ましてや叩くつもりなんてなかった。
まだぷるぷると震えの収まらないユーリの側にしゃがみ込む。
そして顎を持ち上げ、顔を覗き込んだ。
「……………………っ………」
目はぎゅっと瞑られ、口も固く閉じられている。
アーサーは、何となく、先程のようにユーリの顎を撫でた。
まるで猫を愛でるように。
「……ん…………ん、…ふ…ぁ……」
急激に、ユーリの力が全身から抜けてゆくのがわかる。
口がだらしなく開き始め、目はとろっとして半目にアーサーを見つめている。
(……顎が弱いのか。)
先程もそうだったが、どうもユーリは顎を撫でられると蕩けてしまうようだった。
スリスリと撫で続けていると、今度はユーリが「もっと」とねだるように顔を押し付けてきた。
幼気ないその姿に、アーサーの顔がほんの少し緩む。
「………足が…痺れたのか?」
静かに問うと、ユーリはこくんと頭を縦に振る。
「……ふぁい………」
「…そうか。」
アーサーはユーリの顎から手を離した。
ユーリは名残惜しそうにその手を目で追う。
すると、いきなりアーサーはユーリを抱き上げた。
「?………アーサーさま…?」
「……私が運んでやる。光栄に思え。」
そしてそのまま抱え込むと、ダイニングへ向かった。
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