アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
涙 (sideアーサー
-
どうなっている。
部屋に入ると、小さな声で泣くユーリとその顔を踏みつけるアドルフ。
アドルフは笑いながらユーリが大切にしているアヒルを切り刻んでいた。
何だこれは何だこれは何だこれは
瞬間、とんでもなくドス黒い気持ちになる。
ユーリに何してる
何故泣かしている
その足は何だ
「!!?…アーサー兄ちゃ」
アドルフがこちらに気づくと同時にこれでもかというくらい突き飛ばしていた。
ナイフとバラバラのアヒルが床に落ちる。
「貴様ぁ!!!!!!」
ものすごい音を立てて床に転がったアドルフはその勢いで壁にぶつかった。
その上に馬乗りになり胸倉を掴むと、がくがくと揺する。
「痛っ…!痛い!!」
「ふざけるなよ!!貴様…!ユーリに何を…!!!ふざけるな!!!」
『バシッ!!!』
そしてその勢いのままアドルフの頬を思い切り叩いた。
叩かれたアドルフは驚きと痛みで泣き叫び助けを求める。
「っ…う…痛い…痛いぃぃ…!だ、誰か…!」
「…ぁ…あーさ…さま……」
「ユーリ…!」
泣き出したアドルフを離し床に倒れたユーリに駆け寄り支える。
頬が少し擦り剥けていた。
ユーリはアーサーに支えられながらも、そばに落ちているアヒルの首を持ちあげる。
瞬間、アーサーの腕の中で小さな体が震え出した。
「……ユーリ……?」
「……あー…さ…さま…………ぁ…あひるちゃ……が………あ、ひ………る…………
………ぅ…ふ………うあぁぁああ……!!」
「「!!!」」
急に大声を上げて泣いたユーリに、アーサーとアドルフは驚いた。
こんなに泣くのを見るのは初めてだ。
ユーリはぐしゃぐしゃに泣きながらバラバラのアヒルを必死に手繰り寄せ集めた。
「や……いやだ…ぅ……あひるちゃ……やだぁ……なんで……なんでぇ…やだぁ……!」
「…ユーリ……」
やだやだと泣くユーリの姿に胸が締め付けられる。
「…アドルフ……」
ユーリの背からゆっくと手を離し立ち上がる。
こっちはこっちでわんわん泣いているのだが、アーサーには同情心がわかなかった。
落ちているナイフを拾いそのままアドルフの方へ向かう。
「っ…!?アーサー兄ちゃん…?何……」
「…あいつが…ユーリが……貴様の捨てていった玩具をどれだけ喜んだか……あのブサイクなアヒル一つにどれだけ愛情を注いでいたか…!」
「っ……嫌だっ…!やめて!!」
「立て…」
アドルフがそばにあった棚に手をかけると、花瓶やら置物やらがガシャガシャと割れる。
それでも逃げようとするアドルフの襟首を掴み後ろ手に持つと首にナイフを当てた。
「貴様もあのアヒルのようにしてやる……」
「…………ぁ………………………」
みるみるうちにアドルフの顔が引きつっていく。
殺される、と。
刃がアドルフの皮膚を割いた。
『バタンッ!』
そのとき、勢いよく扉を開けてアリアとリザが飛び込んできた。
「「アーサー様!?」」
2人は部屋の状態を見ると一気に青ざめアーサーのもとへ駆け寄る。
「あ、アーサー様、おやめ下さい!」
「いくらなんでもやりすぎですわ!」
「…………………………………」
アーサーは無言でアドルフから手を離した。
アドルフは恐怖から震えが止まらず、その場にストンと座り込む。
あと数秒で本当に殺すところだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 207