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志野の顔がゆっくりと近づき、春臣の唇を掠める。
吐息が触れれば、知れず、胸が高揚した。
「……おまえのそばにいると、狂いそうだよ」
なにかをこらえるような、掠れた声に、春臣は微かに喉を震わせた。
「殿下……」
志野は小さく笑うと、今度はその感触を確かめるように、唇を重ねた。
軽く食んで、舌先で唇を舐める。そっと歯列を押され、誘われるままに口を開くと、合わせが深くなった。ぬるりとした感触が上あごを撫ぜ、ぞくりと背筋が震える。
優しく、ねっとりと絡め取られれば、思わず甘い吐息が零れた。
「っ……はぁ……」
「春臣、ひざに跨れ」
志野の手が、腋の下から背中にまわる。
春臣は正面から、あぐらをかいた上に跨って、彼の前にひざ立ちになった。
「腰を落とせ、ほら」
「ですが……」
「そうしてくれないと、口付けができない」
志野は笑って、春臣の腰を引く。
少し躊躇したが、おとなしく彼の腿の上に坐った。
「よし。えらい、えらい」
大きい手に頭を撫でられて、なんとなく気恥ずかしくなる。
春臣は顔を赤くして主人をにらんだ。
「そんな顔をしても、可愛いだけだ」
志野は笑いながら、髪を撫でていた手で春臣の頭を少し引き寄せて、唇を重ねた。
自然、春臣がかぶさるような恰好になるために、飲み込めない唾液が志野の口に流れ、志野のそれとまざり合う。
舌を絡めるたび、淫らな水音がした。
長い長い接吻を終えるころには、春臣のからだはしびれたように熱く、汗がじっとりと滲んでいた。
志野が春臣の夜着を脱がしながら、首筋や胸に吸いつく。
そうしながら、熱いてのひらで背中や腰をゆるゆると撫でられると、敏感になったからだはびくびくと反応した。
「ん……、ぁ……っ」
のけぞった胸を、志野の舌がゆっくりと舐め上げる。
乳頭のまわりをぐるりとなぞり、柔らかい部分に、音を立てて吸いつく。歯を立てながら、なぶるようにされると、じんじんと熱を持った。
「っ、殿下……っ」
「……春臣、こういう最中は名を呼べ」
返事をする余裕もなく、こくこくと頷く。
微かに笑う気配がした。
「ひっ……!?」
ふいに、大きくからだを揺すられて、春臣はびくんと跳ね上がった。
体勢のせいで仕方なく、押し付けるようになっていたそれが、志野の腹にこすれたからだ。
春臣の反応を見て、なにを思ったか、志野は春臣の尻のあたりを掴んでもっと揺すった。
これにはたまらず、春臣は目を白黒させながら、志野の首にしがみついた。
「あ……あぁっ、し、志野さまっ……!」
「ああ、春臣、腹が濡れてきたぞ。
気持ちいいか?」
「やっやだ……や、あっ、ぁ……っ」
「どうした。いやか」
必死に頭をふって頷く。志野は揺するのをやめて、春臣の顔を覗き込んだ。
「……なんて顔してる」
頬に当てられた手から逃れるように、春臣は泣きながら首をふった。
「まるでおれがいじめているみたいではないか。
おまえがいやなら、もうやめるぞ。どうする?」
春臣は駄々をこねる幼子のように首をふって、志野の首に抱きつく。
困ったように嘆息し、志野は春臣の頭を優しくたたいた。
「春臣……頼むから、なんとか言ってくれ。
おまえは、おれにどうしてほしいんだ」
「……だって、ずるい……」
「……は?」
「おれだけ、気持ちいいのは……ずるいです……」
「……」
微妙な間があいて、突然志野が春臣の腰に抱きついた。
胸に顔をうずめて、うなるような声をあげ、次に俯いて長く長く息をはく。
春臣が戸惑って主人のつむじを見つめていると、彼はようやく顔をあげて、上目遣いに春臣をにらんだ。
「ああ、まったく……まったく、そのとおりだ。
おまえはずるい。可愛いにもほどがある」
「はあ……」
志野はもう一度深く息をはき、春臣の胸に額をつけてから、彼の腰に両手を回して少し浮かせると、下着をおろした。
割れ目をまさぐり、くぼんだところに指を押しこむ。
刺激を待ち望んだそこは、簡単に志野の指を飲み込んでぴたりと吸いついた。
「っ……」
「春臣、おまえは、おれと一緒に快くなりたいのだな?」
熱を含んだ低い声に囁かれ、無意識のうちに頷く。
腰を浮かしているせいで体勢がつらく、志野の頭を抱えこむようにしてしがみついた。
「なんというか、もう……おまえは、ほんとうに可愛いなあ……」
志野はなんとも感慨深げな声音で呟くと、春臣の胸の突起に吸いつきながら、下で指を抜き差しした。
同時に与えられるゆるやかな快感に、春臣の喉から甘ったるい喘ぎ声がもれる。
軽くほぐしただけで志野は指を引き抜き、春臣を抱え上げると、かたく反り返ったそれを赤く熟れた蕾に当てがった。
思わずつばを飲み込んだ直後、一気に腰を落とされ、ひゅっと息が詰まるのと同時に、目の前が真っ白になった。
「──……ッ、…………!」
水面に空気を求める魚のように口をはくはくさせ、なんとか意識を保つ。
志野の声がひどく遠くの方で聞こえる気がした。
「……っ、すまん……つい、気が急いた。
おい、大丈夫か?」
春臣はかろうじて頷いてみせる。ホッと息をついて、志野は、微かに痙攣している春臣のからだを抱き締めた。
「はあ……くそ……落ち着け、ばか者……」
自分に言い聞かせるように、低くつぶやく。
抑え込むようなその声が、胸をにぶくえぐる気がして、ようやく感覚が戻ってきた手を志野の肩にかけ、春臣は自ら腰を浮かそうとした。
「おい……?」
動かなければ、と思うのに、腰が抜けて力が入らない。
なんだか、急につらくなって、春臣はむせた。涙がぼろぼろ零れ、嗚咽がとまらなくなる。
志野は顔をゆがめて、春臣の頭を引き寄せると、乱暴に唇に噛みついた。
それが余計に涙腺を熱くする。息が続かず、その度に離れながら、何度も唇を合わせ、舌を絡め合う。
その激しさの中で、志野は春臣をそっと布団に寝かせると、そのまま腰を揺すり始めた。
「ん、っ、……ん、んっ……」
喉からくぐもった声が漏れる。
律動が激しくなってくると、志野はようやく唇を離した。
一瞬重なった金色が、火傷しそうなほどの熱をたたえて春臣を捉えた。
「……っ、志野さま、あ、あぁっ」
「春臣……っ」
「あ、ん……んぁ、あっあ……っ」
チカチカと視界がまたたく。
快感が腰から首に突きぬけ、ぞくぞくと背中を仰け反らせた。
「っひ、ぁ、あぁっ」
「っ、はぁ……」
志野の、くせのある金茶の髪から、汗が滴る。
頬を上気させ、目尻に張り付いた髪を乱暴に掻き上げる仕草に、彼の余裕のなさを感じて、きゅうっと喉が締まった。
「志野、さま……っ」
たまらず名を呼び、腕にすがれば、志野の目がこちらを向く。
彼は目を細めて微笑し、春臣の手に手を絡め、強く繋いだ。
……ああ。
ほんとうに、この人のことが好きだ……
かすむ思考の中で、そんなことを思う。
何度からだを重ねても、その度に、愛おしく想う気持ちは募る。
この人でよかった。そう、心から思う。
──誰にも望まれず生まれてきた。周囲から疎まれ、親に恨まれ、そんな中に志野と出逢い、求められる喜びを知った。
そうして、いまも、春臣は彼の熱をもっとも近くで感じている。そのことが、どうしようもなく嬉しい……
「っん、ぁ、あぁ……し、の……さま、志野、さまぁ……っ」
「っ……、頼むからこれ以上、煽らんでくれ」
掠れた、低い声。
理性の糸の切れた春臣には、もう、ほとんど聞こえていない。
「あっ、あぁっん、ぁっ……あ、ああっ」
「はぁ……っ春臣……」
「っ、は、ぁ……あ、あっぁ……」
志野は片手で、春臣の太腿を掴みなおした。手も腰も疲れて痺れている。
彼は深く上体を折って腰を密着させ、最奥を激しく穿った。
「ひっぁ、あっ、あ、ああぁっ、あっ……!」
ほとんど悲鳴に近い嬌声が、春臣の喉からもれる。
繋いだ手をきつく握りしめて、志野は絶頂の刻を待った。
「……! ん……く……ッ」
「あっ……あ……っ!」
一気に弾けた。生温かいものが、春臣の中に注がれていく。
春臣もまた、志野の熱が腹の方へ広がってくるのを感じて、白濁をはき出した。
びくびく震えながら、爪先をピンと伸ばして、数回にわけて射精する。
すべて出し切ってから、ようやく強張りを解き、脱力した。
痺れるような快感がじんわりと全身を充していく。
目を閉じて息を整えながら、それに身をまかせていると、あたたかい感触が頬を撫でた。
「春臣」
優しく呼ばれて、うっすら目を開ける。
視線が合うより先に彼の顔がおおいかぶさって、春臣に口づけた。
柔らかくしっとりとしめった唇が、そっと触れては離れていく。
ぬれた髪を指で梳くようにしながら、志野は頬、まぶた、鼻先、そして右耳の耳朶に唇で軽く触れ、最後にもう一度、唇にゆっくりと重ね合わせた。
その仕草のひとつひとつに、確かな志野のぬくもりがあって、深い安堵感がじわりと胸に広がっていく。
ほとんど息が触れそうな距離で、志野は春臣の目を見つめて微笑った。
愛おしくて、泣きそうだった。手をのばし、指先で頬に触れると、彼は嬉しそうに目を細めた。
「志野さま……」
甘えて首に抱きつけば、力強い腕が抱きしめ返してくれる。
耳元で感じる息づかいと、むっとする汗のにおいと、直接響いてくる鼓動と。どれもが、心地よく融け合う気がした。
己を優しく包むぬくもりに身をゆだね、春臣はゆっくりと目を閉じた。
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