アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
普通
-
セシルが廊下で倒れた時、エドガーが妙なことを言っていた。
──まるで人が変わったかのように粗野な口調で、ここはどこだ、と、あいつらはどこに行った、などと言っておりました──
セシルが寝付いたから丁度いいと、僕が兄上にイヴのことを話に行っている間に目を覚まして、城の中を彷徨ったらしいセシル。
熱に浮かされて意識が混濁していたと言えばそれまでだ。
セシルはどんなに見積もってもせいぜい十、十一歳が限度。七年前のあの雨の日、貧民街で僕を助けてくれたエリファレットも十歳くらいだったと思う。だから、どんなに似ていたってセシルがエリファレットの筈はない。
弟、だろうか。
体を拭きながら考える。普通に考えて、七年も経てば人は成長する。僕だってあの日に比べて、うんと背が伸びた。
……普通?
僕の『普通』と、セシルの『普通』。
兄上は今日、城下の視察が終わったらイヴと共に庭へ撒いた花の種の経過を見に行くと言っていた。花なんて城に飾られるのも庭にあるのも綺麗に咲いたものばかり。蕾が固く閉じているその更に前なんて、殆ど見たことない。
「……そうか」
イヴは食べる量が極端に少ない。「俺は今までこんなに食べてこなかったから腹がびっくりしてるんです」なんて言っていた。
勉強を教えてくれる宮廷教師は、人はものを食べて栄養を取って、そうして成長すると言っていた。
じゃあ、まともに食べてこなかったなら?
用意されていた衣服を急いで身につけて、ろくに髪も乾かさずに部屋へ急ぐ。中へ入ると、セシルが椅子に腰掛けて窓の外を見つめていた。
「セシルっ」
「え、わっ! れ、レオさん、どうしたんですか、髪、べしゃべしゃです……」
ぴょんっと椅子から飛び降りて駆け寄ってきたセシルに、手からタオルを取られて椅子に座るよう言われる。でも今は、そんなことより。
「聞かせてセシル、僕たちの『違い』を」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 19