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『住んでる場所も知らないし携帯も持っていないんだしそうそう見つかることはないと思いますよ』黒子達と別れた後もそんな黒子の言葉が頭を過る。
本当に大丈夫だろうか。
青峰から逃げている自分が情けなくもなるが今更どんな顔をして会えば良いか全く分からない。
そんな事をまたぐるぐる考えながらも引越してきたばかりのマンションに帰宅した。
「‥‥やべ、どっか落としてきちまったかも‥」
もう日にちが変わる時刻の事だった。
帰宅時コンビニに立ち寄りマンションに到着するもドアの前で鍵を無くしてしまったことに気付いた。
スペアは生憎この扉の向こうの自室で保管している。
困ったな、とペタリと扉にもたれ掛かった。
それからどうしようもなくボーっと二階から見える景色を眺めていた。
数十分くらい経過した時のことだった。
「‥‥おいこんな処で何をしているのだよ」
いつの間にか睡魔に襲われうとうとしていた処に頭上から聞き覚えのある声が飛んできた。
「‥‥‥緑間」
どうやら緑間はマンションの隣人だったらしく「風邪ひくから入れ」と緑間の部屋に案内された。
今思えば何故引越してから約一ヶ月間もお互いに気づけなかったのだろうか。
リビングに案内されソファに腰を下ろせば「そんなの俺が忙しいからに決まってるだろう」とホットコーヒーを差し出された。
ズズッと用意してくれたコーヒーを啜りながら生活感が全くない部屋に視線を送る。
「緑間って私物少ないんだな」
「‥まぁな、ここには睡眠をとりに帰ってきているようなものだからな。」
「へぇ」
そこで会話が途切れ暫く沈黙が過る。
午前中再会したにも関わらず二人きりのこの状況に今日数度目かの緊張感が沸く。
適当につけたであろうテレビ番組の音がやけに煩く思わずリモコンで音量を下げた。
それを全く気にする訳もなくテレビを見る訳でもなく緑間は椅子の上で足を組み何かを考えていた。
きっと仕事の事なんだろうなと予想できたのはやけに分厚い書類を眺め眉間に皺を寄せていたから。
「‥あのさ、一つ聞いても良いか?」
「‥‥なんだ?」
「俺帰った方が良いよな?」
「‥‥鍵もないのにどうやって帰るのだよ」
「そうでした。」
やけに真剣な顔つきなものだから俺が居たら邪魔になるかなと思いそう言うもここに居る元々の理由をすっかり忘れていた。
「風呂は沸かしてあるから適当に入ってくれても構わない」
「おーサンキュー」
風呂を気にかけてくれていたのかこんな時間からお湯を沸かしてくれていた。
そんな気遣いに甘え俺は先に風呂を借りることにした。
「‥‥なぁ緑間ー‥‥シャンプー切れたんだけど?」
伝えるのにわざわざ服に着替えるのも面倒くさく腰にタオルを巻き緑間に問いかければそんな俺の姿格好に驚いたのか顔を赤くした緑間が口籠っていた。
「‥‥なんだよ?」
「そ、そんな破廉恥な格好でうろつな‥」
「は?」
「‥‥シャンプーは後で持っていくから風呂に戻るのだよ」
破廉恥てなんだ。
高校卒業後またアメリカに戻ったものだから日本の言葉が分からないことは今でも多々ある。
言葉の意味はわからなかったが緑間の様子を見ると何故か驚いているように見えた。
けれど同居していた青峰も今の自分と似たような格好で部屋をうろついたり全裸の時もあったものだから緑間の反応が気になった。
早く戻れというものだから渋々戻るも疑問符ばかりが頭に浮かぶ。
「シャンプー持ってきたのだよ」
「サンキュ‥‥‥なんで手だけ?」
「気にするな」
なんていう緑間だが余計気になってしまう。
だってシャンプーを渡すにしてもドアを若干の隙間程度に開き腕だけを伸ばし渡してきたのだから。
「やっぱ変人を撤回にすんの撤回するわ」
「‥‥?何を言っているだかさっぱり分からん」
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