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とある弟のブラザーコンプレックス①
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「・・・起きろ!真尋(マヒロ)! 遅刻するよ!!」
「・・・あと・・・五分・・・」
あと五分、あと五分って何回言うんだ・・・。
正直もうこのまま放っておいて、自分は会社に行ってしまおうか・・・?ああ、でも今日の朝の講義は出欠に厳しい先生だから、絶対に起こして欲しいとお願いされたんだっけ・・・
「お・き・ろ!」
そう叫んで真白は、頭まで布団をかぶって一向に起きようとしない弟の掛け布団を勢いよく剥いだ。
「・・・さむい・・・凍える・・・」
「うそつけ! ホントにもう起きて。もう俺、出掛けるよ!」
「え! うそ! もうそんな時間!?」
がばっと起き上がり、時計を確認した真尋はやっと目が覚めたようで、わたわたと支度を始めた。それを横目に見つつ真白は弟にこれでもかと聞えるぐらいの大きな溜息をつく。
「じゃあ、俺、もう出るから。ちゃんと実家に帰ってね。」
「えー! なんで?」
「・・・なんでじゃないよ。昨日も言ったけど、ここは俺の家。お前の家じゃない。だいたい大学だって実家の方が近いでしょ? いいね? 不必要にここに来ないって約束守ってよ! じゃ、もう行くから」
ああ、もう!今日もこんな時間になってしまった…
昨晩、佐伯に送ってもらい帰宅した真白だったが、案の定、部屋では弟の熱烈な歓迎が待っていた。真白がドアを開けた途端に激しく抱きつき、真白は息が詰まる。だいたいこんな大きな男に毎度毎度体当たりされたら骨が疲労骨折するんじゃないかって思う。真白はどちらかというと机に向かって本を読む方が好きなタイプで、弟は元気ハツラツで体を動かしていないと気が済まないタイプだ。高校時代はメインを陸上部で過ごしていたようだが、助っ人で、柔道やらラグビーやら、とにかく当たりの激しいスポーツもやっていたようだった。兄弟でこうも違うのは何故だろうと度々思う。一番下の妹はお年頃で、ファッションやらなにやらと、キャピキャピしたものに最近興味がいっている。これもまた真白には分からない分野だった。
「兄さん! お帰り! 今日もお勤めご苦労様でした!」
真白を胸に抱きしめながらしっぽでも振っているように見える。大型犬か?と真白のテンションはどんどん下がっていく一方だった。でもここで何も話さず、なあなあになってはいけないと心に決め、声のトーンを少し下げしっぽを振りまくっている大型犬に言い捨てる。
「・・・そう思うんなら、もう少しテンション低めにしてよ。疲れて帰ってきてそのテンションで絡まれると余計に疲れるんだけど」
弟も妹もかわいいのは変わらないが、何もできない小さな子供のようにいつまでも甘えられてては、二人のためにならないと思っている。だから実家を離れたのに、弟は飲み会で終電を逃したと理由をつけては泊まりに来たりする。弟に比べれば妹はまだマシだったが時より近くまで来たと寄っていく。
育て方、間違えたかな・・・
・・・いやいや、俺は親じゃないんだし。ああ、でも、忙しい両親に変わって俺が二人の面倒を見てきたわけだ。多少は責任があるだろう・・・。よし、これからはビシビシと厳しくいこう。うん。
佐伯に言われた事を実行しようと、真白は弟に真面目な顔を向ける。
「真尋、ちょっと話があるからそこに座りなさい」
「? え? なに?」
キョトンと真尋は真白を見下ろす。見下ろされるのが嫌だから座れって言ってんのに・・・真白は溜息を付く。真白の部屋は1LDKで備え付けのベッドと机しかない。テーブルは一人だから必要ないので敢えて購入しなかった。なので直に床に向かい合って二人は腰をおろした。
「真尋、お前今年でいくつになりましたか?」
「・・・なんなの? 18歳になったけど? 兄さん知ってるじゃん」
「18歳にもなって、いつまでも俺の家に入り浸るぐらいなら一人で暮らすか実家に帰って。ここは俺の家であってお前の家じゃないし、ホテルでもないんだよ? だいたいこんな使い方するためにスペアコードを渡したわけじゃないんだから」
この時代、全ての情報がアクセサリーに収められている。真白はブレスレット型の端末を付けている。身分証明はもちろん財布から家の鍵、電話、メールとさまざまな情報が入っている。真白の家の鍵はデータで合鍵をやり取りできるが、何かあった場合の為にと弟に鍵を渡したのは失敗だった。
「え、なんで急にそんな事言う訳?なにかあったの?」
「……なにもないよ。前から思ってた事だよ。いつまでもそうやって俺に甘えられるの、その、良くないって思うから。真尋はもっと自立していかなきゃダメだよ。朝だって起こされないでもちゃんと起きないと。俺がいない時は家政婦さんに起こしてもらうのとかダメだよ。ちゃんと一人で起きられるようになりなさい。」
「・・・・俺の事、迷惑なんだ・・・」
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