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・漆原
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静かに眠る春虎を見下ろしながら、漆原は何とも言い難い感情を持て余していた。
春虎の身体につけた痕は誰でもなく漆原がつけたものだ。心につけた痕はもっと深いはずだ。
頬にあった痣は薄くなっているが、これも漆原が殴って出来たものだ。そのまま押し倒し、嫌がる春虎を犯した。挙げ句、写真に収めた。
『許さない…………ーーー』
シャッターを切る漆原に春虎は睨み付けながら言っていた。
『うん、許されないし上坂はオレを嫌ってるよね。別にいいんだ。寧ろ憎んでもいいとも思ってる。こんなことされて憎まない方が不自然だし』
憎しみと怒りで染まった目にやさしく微笑む。
『それでも上坂の中にオレがいるなら、それでいい』
『……なっ……何言ってんだ……』
驚きと得体の知れないものへの恐怖から、見開かれる瞳に自分だけが映っていることに安堵する。
『何だっていいんだ。上坂の中にオレという存在があり続けられるのなら』
『…………お前……意味わかんねぇ……』
『そう?単純な話だよ。オレが最も恐いのは、上坂に無として認識されないこと、意識されないこと。その為ならどんなことだってするよ』
『……何で……』
春虎の言葉の続きは分かっていた。
何故、そこまでするのか。
この問いに関する回答も単純なものだ。
『上坂が欲しいからだよ』
『どうしたって上坂の気持ちは手に入らない。求めても上坂は拒否する。今までそうだった。上坂はそのままでいいよ。身体をオレが満足するまで提供してくれたら、写真は全て消去するし、誰にも見せない』
『…………俺が嫌だって言ったら、どうする』
『一生消せない傷をつける。この写真を上坂の家族に見せるだけでも充分、効果は得られる。その傷をつけたオレを上坂は忘れたくても忘れられない存在に出来る』
『……どっちにしろ、お前は損しねぇな』
『その通り。上坂が条件をのんで、提供してもオレのことは忘れられないし、拒んで傷付いて忘れられない存在になる。けど、それは上坂とオレだけに止まるか、それ以上になるかは上坂次第だよ』
狡いことを春虎に突き付けていると漆原は自覚していた。ここで拒否すれば春虎の家族も傷付くことに繋がる。自分だけが傷付き、内に秘めれば何事も無かったように出来る。春虎が取れる選択は一つしかないのだ。
春虎は一瞬、目を伏せてから、小さく頷いた。
『……分かった…………』
あれから幾度、春虎の身体を貪ったことだろう。殴ったあの日以来、学校で事を行うことは無くなり、その代わりに漆原の家に春虎が泊まるようになった。家に来れば無論、抱かれると知った上で春虎は訪れる。外泊することにどう説明しているのか分からないが春虎の家族からの連絡は一度も無い。
漆原が満足するまで…………。
そう条件したが、そんな時は訪れるのだろうか。
これだけ肌を重ねても、春虎の肉体すら手に入れも時折、どうしようもない不安が込み上げてくる。今だってそうだ。
「上坂」
春虎からの返事はない。ベッドに潜り、春虎の背中ごと抱き締める。
「ん」
微かに春虎の眉が動いたが、すぐにまた静かになった。腕の中いっぱいに春虎の温もりと匂いが満ちる。それが漆原の不安を拭い、安心させた。今はそれだけで充分だった。
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