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ゆう9
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「退院、おめでとうございます」
「、、ありがとうございます」
世話になった看護師に見送られて病院を後にする。
外は思ったより寒かったが、空は綺麗に晴れ渡っていた。
思いっきり外の空気を吸い込むと、冷たく鋭い空気が体内を巡り、生きてる実感が湧くような気がする。
母親と共にゆうは久々の実家へと向かった。
ガチャリ…
懐かしい音は、あの日こういちを振り切って出て行った時と変わらない。
心臓が高鳴るのを感じた。
でもこれは期待からじゃない。
これから待ち受ける絶望を予感しているのだ。
俺は深呼吸すると、家に足を踏み入れた。
「ただいま、、」
懐かしい実家の匂い。
「おかえりなさい、、」
一緒に帰って来たのに、母親はわざわざ振り返ると、俺を出迎えてくれた。
そしてギュっと抱きしめられる。
大学生にもなって母親に抱きしめられることにこそばゆさを感じはしたが、俺の不安を感じ取ったのか、小さい子どもの様によしよしとされれば、なんだか胸の動悸が少しおさまったような気がした。
登り慣れた階段を上がる。
子ども部屋はすぐ目の前で、俺はその冷たい扉をゆっくりと押し開けた。
…………
部屋の荷物はそのままのはずなのに、全く温もりを感じない。
それが余計に部屋の空気を冷たく感じさせていた。
俺はあの時までともと一緒に寝ていたベッドへ腰を降ろすと、そのまま倒れるようにゴロンと横になった。
ともはどんな気持ちであれから一人の夜を過ごしていたのだろう…
今更になってゆうは思う。
パリッ
顔を横に向けると何か紙の様な物が折れる音がして、俺は急いで枕の中に手を突っ込んだ。
指先に何かが触れる感触がする。
そのまま引っ張り出すと、それは二つに折り畳まれた一枚の紙だった。
心臓が、高鳴るのがわかる。
こんなことをするのは一人しかいない。
唾を飲み込み恐る恐る開くと、とても見慣れた筆跡でその紙は埋め尽くされていた。
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