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なんか調子狂う
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side杜宮啓介
「…委員長さ、今朝黒いレインコート着てなかった?」
最悪だ。
本気で今日は今朝からツイてない。
俺はこの目の前にいる奴がこれ以上、何かを云う前に強引に廊下へと引っ張り出す。
「わわ…?!ちょ、委員ちょ…」
「いいから来い…!」
……望月光汰。
今年4月から同じクラスになったクラスメイト。驚いて戸惑う姿が少し、珍しい。
普段は物静かで、クラスでは目立たない奴だ。何処か表情が乏しい。何を考えてるのか分からない感じ。何に対してもヤル気が見えない、俺とは正反対な…。
そんな望月に今朝、俺は見られてしまった。…なんだよコイツ。普段はぼけっとしてて気ぃ抜けてる癖して。きちんと見てやがったのか。
あんなひと気のない場所、通るなっての。
軽く睨む。すると、望月はびくっと肩を窄めた。…へぇ。意外と表情変わるじゃんか。
「今朝のことは黙ってろ」
変に装わなくていいよな。
もう、素の俺はバラしてしまったし。
「俺とお前だけの秘密にしてくれ」
きちんと釘を刺して置かないと困るんだよね。…アンタは口は軽そうじゃないと思うけどさ。
望月は面白い位に目を丸くしてこちらを見ている。…何?変顔??阿保面が更に酷くなってるぜ?
「…はぁ。まあ、別にいいけど」
望月は小さく頬を掻いては間の抜けた返事を返す。…なんだかそんな軽く返事を返されるとこっちまで、気が抜けてしまう。
「…どーも有難う。あ。それからいきなり手、引っ張っちゃってごめんね」
にこりと何時もと変わらない笑顔で言う。
そ。いつもの皆が知ってる『委員長』の俺に。この方が何かと都合がいいんだよね。
そんな俺の猫被りっぷりにあまり驚きもせず、望月は「…いーえ」と此方も普段のあの、何に対しても興味もヤル気もありませーんってな顔で言われる。
…まぁ、これからも接点なんてあるわけないだろうし?悪く思われてもどうでもいいか。
「…それじゃ、俺は教室に戻るね」
一言、それだけ言って俺は教室へと戻る。
望月はゆるーく、んーっと生返事を返しては廊下の窓辺で空を眺めていた。
…変なやつ。
自由ってか、自分を装ってないってか…猫みたい。
空は相変わらずどんよりとして、雨が降り続く。…気分は、晴れない。
今朝のことを思い出した。
捨てることが如何しても出来なかった。
…一応、袋に入れたけど。濡れてないよな?
ふと視線があいつに向く。
丸まった背中は、本当に猫のよう。
口を小さく半開きにし、見上げる空を見詰める瞳。間抜けくさくって、少し気になった。
…嫌だな、なんだこれ。
気になるなんて、なんだよ本当さ。
(……なんだろ、なんか調子狂うんだけど)
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