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騎士の馬と彼岸花
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強引に振り向かされたハロ。
ハロの口を塞いでいた僕の手が、剥がされた。
「ハロは、困ってるの?」
見えない瞳を覗き込みながら、華亥は首を捻った。
ハロは、華亥に瞳を据えたままで、眉を八の字に歪めた。
「…………」
ハロは、困り顔のままで、下唇をきゅっと噛み締める。
言葉を紡がないハロに、華亥は、はぁっと大きく息を吐く。
「じゃぁ、馬と花…、どっちが好き?」
「だからっ!」
華亥の質問を遮るように、声を荒げた。
顎を掴む華亥の手を無理矢理に引き剥がし、ハロの耳を塞ぐように、頭を胸に掻き抱く。
馬は、僕の刻印、騎士の馬。
花は、華亥の刻印、彼岸花。
その選択は、ハロに、させるべきじゃない…。
どちらかを選んだハロは、選ばなかった方への負い目を感じる。
それに、選ばれても、選ばれなくても、僕の心には、蟠りが生まれる…。
「ハロに決めさせないでっ。それは、ハロが決めることじゃないだろ? 僕は、兄さんの刻印でいいって言ってるんだっ。ハロは、華亥のものでいいって!」
自分で放った言葉が、自分の胸に…、突き刺さった………。
いつの頃からか抑えていた欲求が、蓋を押し上げ、溢れ出した。
華亥は、僕と同じで。
でも、華亥のものと僕のものは、やっぱりそれぞれのもので。
それは、僕のもの…、じゃない。
――ハロは、華亥のもの。
自分で放った言葉に、抉られた胸。
ぐわっと熱い感触が瞳の奥に湧き上がり、形を成した感情が、ぼろっと零れ落ちていた。
「なんで、我慢…するんだよ? 欲しいなら、欲しいって。これは、僕のものだって言えばいいじゃないか」
呆れるように声を放った華亥の親指が、音もなく流れる僕の涙を拭った。
「お前はいつも言わない。自分が我慢すれば…、言わなければ、丸く収まるとでも思ってるんだろ?」
ふっと鼻を鳴らした華亥は、勝ち誇ったように、僕を見下ろす。
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