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呟
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気まずい雰囲気をどないもできへんまま、新幹線の時間が来て
オレは岡山に戻った。
帰りに見付けた酒屋で、日本酒を買うて
土産代わりに義母から渡されたバッテラを片手に、部屋でしこたま呑んだ。
胸の中がモヤモヤして、呑まずには居れん気分やった。
「…あぁ、酔うた。」
ゴロンと床に寝転がると、ベランダの窓越しに、光るもんが見えた。
―三日月や。
静は、どないしてるやろか?
ふ、とそう思った。
―そない言うたら
帰宅メール、してへんかった。
荷物の上へ脱いだままの上着から、オレがスマホを出した途端、画面が青く光り始めた。
―うわっっ!!
スゴいタイミングやな。
もしかして、見えてたんか!?
アホなことを考えながら、急いで画面をタップする。
「もしもし?オレが今スマホ持ったん、見えたんか?」
『…バカを言うな。北海道と岡山だぞ?そもそも、そんな能力があったなら、誰が電話なんぞ、ワザワザ持ち歩くものか。』
憮然と言い放たれた言い草が、何とも静らしい。
「そない言うけどな。ホンマに、手にした瞬間、鳴ってな。かなりビビッた。こんなことが、あるんやなぁ…。」
フッと笑ろたような、声がして
左の口角をあげた静の顔が、一瞬見えた気がした。
『…おまえと俺は繋がっている、そう言っただろう。今更、何を驚く?』
「あぁ、…そう、やったな。」
―繋がっとる。
顔が見えへん、一緒に居らん時でも
オレは静と…。
そない実感したら
なんでか、涙が出てきた。
「…和泉?」
「あぁ、悪い。ちょっと鼻が…。花粉かな?」
慌てて鼻を押さえたけど、漏れた嗚咽は、聴こえてしもたらしかった。
―あ~ぁ。
カッコわる…
カッコ悪なったついでに、思い切って言うてみた。
「ソッチは杉花粉、飛ばへんねやんな。…羨まし。花粉の時季だけでも、ソッチに住もかなぁ。」
「…住めばいい。」
ボソリと呟きがかえってきた。
―えっ!?
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