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ラストスパート!
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「お断りします」
キッパリと、ハッキリと、何の迷いもなく、
ボクはそう伝えた。
「そうですか・・・残念です」
夏目さんは溜息をつくと、
ガチャリとフィッティングルームの鍵をかけた。
「では、今 頂きますね」
「待て待て待て!!馬鹿か!?
アンタは馬鹿なのか!?」
何言ってんだ、正気かこの人!?
どこのエロゲーだよ!?
「真っ昼間から何しとうとしてんの!?」
「だから『今夜』と提案したではありませんか」
「選べるのは時間だけだったのか!?
でもって昼でも夜でもいいわけあるかっ!!!」
男なんてお断りだ。
女ともまだなのに。
・・・そもそも彼女いた事ないけどな!
男子校に入学した時点で絶望的だけどな!
「でも優樹さんは絶対に私の提案をのまなければ勝負には勝てませんよ?」
「は?何で?」
「今、校内にいるのは私と優樹さん。綾人に椎名さんです。そして綾人が今 首位独走状態なのをご存知ですか?」
「・・・で?」
「綾人の弱点、知りたくないですか?」
・・・なるほど。
交渉したら僕は綾人さんの弱みを得れる。
夏目さんは僕を1晩自由に出来る。
ってメリットがあるのか。
「ちなみにそのメリットは確実に僕に優勝賞品を譲ってくれるぐらいの力があるものなんですよね?」
「勿論です。お約束致します」
「そうですか。・・・じゃあ、ボク 走るんでさよなら」
ボクはさっと脇の下をくぐり、更衣室から出る。
ロック解除をスムーズに出来たのはなかなかいいスタートダッシュに繋がったんじゃないか?
「なぜ断ったんですか?」
再び走り出すボクの後ろを夏目さんが追う。
「そんなの信用出来ないからに決まってるでしょ!?」
よく考えて見てほしい。
出会ってまもない頃に、出会ってまもない人に寝込みを襲われたボクの気持ちを。
仮に恋人だったら100歩譲ってまあ、わかる。
だけど他人以上 知り合い未満程度の相手にあんなことをされて、あっさり『はい、わかりました』と信用する方がおかしいと思う。
(そんな相手と未だにルームシェアしてる時点でもう既におかしいけど)
「優樹さん、もう諦めたらどうですか?脚も限界でしょ?」
「諦めないっ!絶っっっっ対に諦めないっ!」
ド変た・・・夏目さんの提案を何の迷いもなく
(どう考えても迷う部分がない)
断ったボクはグラウンドに向かう。
正直に言うと、限界はとっくに来てる。
だって元陸上部とは言え、走り込んでたのは半年前までの事だし。
今 茶道部でお茶飲んで和菓子食べて座って動かずのんびりして・・・って太る様な事しかしてないし。
もう身体管理も食事制限も特にしてないし。
そこまで太ってはないけど昔みたいに身体軽くないし、脚は鉛のように重く、喉は乾ききっててヒリヒリする。
肺は悲鳴を上げていて、身体中の水分は随分前に全部出てしまったのか もう汗すら出てこない。
今すぐにでもその場に倒れ込んで休みたい気持ちでいっぱいになる。
・・・けど、何をされるか分からない恐怖を受け入れる覚悟はない。全くもって持ち合わせていない。
(つーかどっちにしろ掘られるじゃんか!!)
恐怖が走る糧になっているボクは恐怖の源と距離を開けるためにさらに加速する。
グラウンドにつくと腕時計のパネルが明るくなった。
【お疲れ様です!グラウンド残りラスト一周です!
ゴールに向かってください!】
グラウンドにはボク達の他に何人か走っていた。
「うわぁ・・・」
有名なサッカーチームのユニフォームだったり
某巨大アイドルグループ風の衣装だったりを
身にまとった人達が目に飛び込む。
ここは仮装パーティーか何かか?
(※人のこと言えない)
異様な光景に戸惑いつつ、ボクはグラウンドのトラックに沿って走る。
ブチンッ!!!!
「い゛っ!?」
ボクはその場で膝をつく。
不吉な音と同時に左のふくらはぎから強烈な痛みに襲われる。
ボクは痛みに耐えるよう膝に爪を立てる。
(ここまでせっかく頑張ったのに!?
何で今こんな目に・・・!あと少しなのに。
もうすぐゴールなのに・・・!)
痛みと悔しさで視界が滲む。
「大丈夫か!?立てるか!?」
倒れ込むボクの頭上から大声が降ってきた。
視界の端に差し伸べられた手が見える。
「・・・ありがとう、ございます」
ボクは手を掴んで無事な方の足を支えに立ち上がる。
「良かった、いきなり倒れるから心配したぞ?」
「すみませ・・・」
顔を上げると、そこには剣道着に身を包んだ人がいた。
ちなみにお面や防具まで完全フル装備。
「・・・誰だよ!?」
ボクは思わずそうつっこんでしまった。
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