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母親は俺に隠れて浮気相手と会っていたが、その雰囲気から薄々勘付いてはいた。
父さんは母親の浮気に気付いても暫く何も言わなかったそうだ。笑顔で何事も無いかのように振る舞っていたから、俺は父さんがその事に気付いているとは思っていなかった。
そんな日々が続いていた。
でもある日から、母親は家にその男を連れ込むようになった。つまり、俺に隠しもしなくなった。
俺がいる時に寝室で営むこともあった。父さんのことを裏切った女なんて嫌いだった。嫌いな女の喘ぎ声なんて聞きたくない。相手の男の悩まし気な吐息も。二人が鳴らすベッドの軋む音も。
俺はあまり家に帰らなくなった。
ある時、父さんが予定よりも一週間早く帰国した。浮気相手はその時家にいた。
父さんは玄関で見知らぬ靴に気付き、一旦その場を離れ、再び夜に家に帰った。浮気相手の男はもう帰っていて、女一人でいた。
父さんは俺がいない理由を尋ねた。友達と遊びにでも出掛けているのかと。
女は知らないと言った。最近殆ど家に帰って来なくない、不良息子になったと。
父さんは気付いた。俺が家に帰らない理由に。
そして女を怒鳴り、女を家から追い出した。
俺に電話を掛けてきて言った。もう母親はいないから、帰ってきて大丈夫だぞと。こんな事になって申し訳無かった、と。
良い父親だと思う。
俺ははぁ、と息をついて荒太の元へ戻った。
そうしたら、この別人のような荒太がいたのだ。
そんなに長い時間通話していたか?……いや、そんなことは無い。俺が外にいたのはせいぜい五分がいいところだ。なのにこの変わり様は一体……?
「でんわ、なにか、あったの?しわ。」
そう言って荒太は自分の眉間をつついた。
俺がもし今険しい表情をしているのなら、それはきっとお前のせいだ。ちょっとこの状況に着いていけない。
「……いや、別に。俺が出てる間、何飲んだの?」
「はは、うぃすきー、ろっくで飲んじゃった。」
何が楽しいのか可笑しいのか、荒太の口角は上がっている。
テーブルの上のグラスは空だ。荒太の前にグラスは一つしか無い。つまりチェイサーも無い。
そもそも五分の間にウィスキーを頼んで飲み干したとなると、ほぼ一気みたいなものか。アホなのか、コイツは。
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